福島県の郡山からJRの磐越西(ばんえつさい)線で会津若松に向かう際の車窓の風景は心地よい。磐梯(ばんだい)熱海という温泉町を過ぎると、進行方向右側に勇壮な磐梯山が見えてくる。とくに春先は、雪をかぶった磐梯山の、車窓を額縁にした絵画のような美しさに目を奪われる。
やがて左側に猪苗代湖が登場する。会津若松市、郡山市、猪苗代町にまたがる面積全国4位の大きな湖だ。列車は会津盆地を南に下り、会津若松駅に至る。各駅停車で1時間20分弱。ゆったり走る列車の旅が楽しめる。
しかし到着した会津若松駅は、列車での高揚感が一気にしぼむ殺風景なたたずまいだ。駅前ロータリーだけがやたらに広く、駐車場やレンタカー店、駅前ビジネスホテルなどが点在する程度。街の中心は駅から南下した市役所近辺の東栄町(ひがしさかえまち)・栄町や、古くからの蔵が軒を連ね、観光客でにぎわう七日町付近となる。
会津若松の歴史は14世紀に蘆名(あしな)直盛が黒川城を建てたのが始まりとされ、当時は奥州でもいちばん発展した街だったという。その後1590年に蒲生(がもう)氏郷(うじさと)が領主となると城は「若松城」、あるいは蒲生家の家紋の鶴にちなんで「鶴ヶ城」とも呼ばれることになった。鶴ヶ城は、全員が自刃した白虎隊の悲劇とともに、戊辰戦争から続く会津戦争の象徴的な存在となり、現在は会津若松観光の中心である。
鶴ヶ城に加え、七日町の蔵通り、東山町の武家屋敷などを散策するのが定番の観光コースだが、観光の街としての発展ははかばかしくない。2013年にはNHKの大河ドラマ「八重の桜」が放送され、主演女優・綾瀬はるかの人気もあって年間396万人もの観光客を集めたが、その後は低迷。現在は300万人前後にとどまっている。交通の便の悪さや観光スポットの少なさ、夜のにぎわいのなさなどが影響し、「日帰り観光」の街から脱却できないのが現状だ。
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