新型コロナウイルスの感染が広がりを見せ、社会全体が不安を払拭できずにいる。過度な楽観も過度な悲観も避けるべきとわかってはいても、経済のダウンサイドリスクは覚悟しなければならないだろう。
SARS(重症急性呼吸器症候群)が流行した2003年と対比すれば、この17年間に中国のGDP(国内総生産)は8.5倍となり、世界のGDPに占める割合も4.3%から16.3%に拡大、世界経済への影響は甚大なものとなる。
筆者の専門であるクレジット市場への影響を整理してみよう。中国の一時的な経済活動の途絶は2つのチャネルを介して悪影響をもたらす。
第1に、アジア地域における収益への影響だ。わかりやすいものでは、インバウンドがある。
春節の時期の旅行者は中国人旅行者全体の5%を占め、日本を含めシンガポール、フィリピン、台湾などでは少なくとも同時期の観光客が20%は減少した。香港に至っては、特有の事由もあるものの、実に80%減となっている。観光、航空、小売りなどへの影響は無視できない。
10年に日本航空は会社更生法適用を申請したが、その遠因には鳥インフルエンザやSARSなど感染症の影響があった。これを踏まえれば、新型コロナウイルスも、ある特定の業種や国におけるデフォルトリスクの顕在化に発展しないとも限らない。
第2に、アジアのサプライチェーンの中国依存度が高いことによる影響だ。コロナウイルスの影響が長期化し、工場の操業停止に追い込まれる地域がさらに拡大していけば、エネルギー、通信、ヘルスケア、自動車、産業機材など多くのセグメントに影響が出る。外出が控えられるため、ゲーム機など一部の収益にはプラスとなる可能性もあるものの、それも、中国からの部品供給なしに完成品が作れるのか、はなはだ疑問である。
金融緩和がアンカーに
金融市場ではリスクオフ(回避)に拍車がかかることで、ハイイールド(低格付け高利回り)の債券は一様に売られやすくなることにも注意が必要である。
SARSなど類似のイベントでは、クレジットスプレッド(信用リスクに応じた利ザヤ)の拡大はそれほどでもなかったことも念頭に置きたい。ただし、03年当時はまだクレジット市場が黎明期なので反応が薄かった可能性はある。
もっと重要なことは、今回は金融緩和相場が継続していることである。欧州ではECB(欧州中央銀行)が社債の買い取りを続けているし、米国も昨年の政策金利引き下げを受けて景気は回復している。事態を慎重に見守らなければならないが、リスクオフモードに目を奪われすぎて、金融緩和がクレジット市場のアンカー(支え)となっていることを見逃してはならない。
まとめると、目先、新型コロナウイルス流行の持続期間が不透明な間は、中国にサプライチェーンを依存している度合いが高い企業や業種にヘッジを利かせるのが1つの投資戦略となる。それにつれて広がった投資対象の中から銘柄を選別して、押し目買いをするのもよい。
さらに、新型コロナウイルスの問題をこれからのわれわれの社会のブレークスルーにつなげられないか。日本全体で自然災害などのリスクが高まる中、BCP(事業継続計画)が問われている。これをきっかけに在宅勤務や遠隔医療などの仕組みづくりとその円滑な運用に踏み込んだらどうか。いつかはわからないが必ず来る災いを、学びにかえる手立てはある。






















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