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社会に革新をもたらす「超域人材」を育てる
トップアスリートから学ぶリーダーシップ 優れた若手人材を次代のリーダーに導く
5年一貫の博士課程プログラム

  • 制作:東洋経済企画広告制作チーム
大阪大学の「超域イノベーション博士課程プログラム」が始まって3年が経過しようとしている。従来の大学院教育にはない革新的な教育から、社会にイノベーションをもたらす新しい時代の博士人材が育ちつつある。

平井啓 未来戦略機構・准教授
岡本依子 特任講師・シドニー五輪銅メダリスト(テコンドー)

専門分野と超域プログラム
“二束のわらじ”に挑む

既存の境界や枠組みを楽々と飛び超え、社会に革新をもたらす次代のリーダーを社会に輩出することを目指し、大阪大学の「超域イノベーション博士課程プログラム」は、2012年にスタートした。

博士課程前期・後期に及ぶ5年間一貫学位プログラムには、文系・理系を問わず多様な研究分野を専攻する大学院生が集結。博士号の取得を目標に5年をかけてそれぞれの専門分野を究めつつ、並行して本プログラム独自のコースワークも履修し、実社会で通用する「汎用力」を養う。タフな履修課程だけに高い能力やモチベーションが求められる。

現実の社会における課題の解決に挑むプロジェクト型学習など、従来の大学院教育にはなかった手法で、「超えることでしか生まれない革新を創造する力」を鍛え上げるところに、本プログラムの独自性が光る。中でもユニークな授業の一つに、「超域ライフスキル・トレーニング:スポーツコミュニケーション」がある。五輪経験者などトップアスリートの直接指導のもとで、院生がスポーツや地域の子どもたちへのスポーツ教育に取り組むというものだ。

スポーツで高い負荷をかけ総合力を鍛える

「コンセプトは『限界を超える経験』を得ること。限られた時間の中で、『何をするか』意思決定し、実行し、失敗すればすぐに結果となって表れるという状況を短時間で作り出せるのが、スポーツの利点です。それを自らの限界を越えるような状況で経験してこそ、人間としてのたくましさが鍛えられます」。

プログラム設計から指導までを担う平井啓准教授は、狙いをこう明かす。3泊4日の合宿形式のトレーニングに参加した院生は、早朝のランニングに始まり、テコンドーやフットサル、リレーといった競技に挑み、心身ともに「超えられない」と思うところまで追い込まれる。

「その中で自らの身体能力や体力の限界、弱さを自覚する一方で、自分自身の踏ん張りや仲間の励ましによって『もうできない』と思ったことができる、『超える瞬間』を体感します」と、リレーを指導する江里口 匡史氏(陸上短距離・ロンドン五輪代表)は語る。

またどのメニューもチーム制で競技を行い、院生が自分たちで考え、戦略を練り、目標達成を目指すよう設計されている点も特長的だ。「身体能力も体力も十人十色。そのうえ、筋肉痛で思うように動けないなど数々の制約の中で、どうすればチームのメンバー一人ひとりを生かすことができるかを真剣に考え、行動するようになった」と、奥野輔さん(基礎工学研究科)は自らの変化を認める。山並千佳さん(国際公共政策研究科)は、「身体能力ではかなわなくても、自分のできることを見いだし、その役割を精一杯果たすことでチームに貢献できると実感した」と言う。

鮮烈で濃密な体験によって、院生は短い間に時間管理や目標設定、コンディショニング、コミュニケーションといった「ライフスキル」能力を向上させるとともに、課題や困難に直面した時、自らの限界を超え、あるいはリーダーとなって組織を率いることでそれを克服する力を磨いていく。

「身体能力が高いだけのトップアスリートはいない」

指導にあたる講師には、岡本依子特任講師(テコンドー・シドニー五輪銅メダリスト)をはじめ、朝原宣治氏(陸上短距離・北京五輪銅メダリスト)、高山勝成氏(ボクシング・第10代WBC世界ミニマム級王者)、高山氏を育てたトレーナーの中出博啓氏など、世界トップレベルのアスリートらが名を連ねる。

講師の中には、朝原宣治氏ら五輪メダリストもいる。世界のトップと戦ったアスリートの実体験を聞き、さまざまな課題をこなす中で、院生の表情もたくましくなる

「身体能力が秀でているだけでは、頂点を極めることはできません。自分の能力や限界を俯瞰的に把握したうえで、高い目標を達成するために何が必要かを論理的に考え、的確な方法でやり遂げる。ネガティブな感情をコントロールし、どんな時もメンタルを強く保つ。また多くの人に支えてもらうための対人関係スキルも欠かせません。そうしたあらゆる『ライフスキル』を世界レベルにまで高めた優れたアスリートによる指導だからこそ、受講生の吸収力も目覚ましいのです」(岡本特任講師)。

加えて、昨年、一昨年の同授業を受講した上級生がファシリテーターとなって現受講者をサポートする仕組みが、学びをさらに深いものにしている。

「当事者として参加した時は、自分や自分のチームのことしか考えられなかったけれど、今年は受講生全体を見渡してマネジメントするなど、メタ視点を持って後輩を導くことができました」(佐藤紗良さん・文学研究科)と、院生が語る一方で、平井准教授も次のような手応えを感じている。

「リーダーシップは、言葉だけで教えて身に付くものではありません。活動を通じて『体得』し、合宿での体験を自らの言葉で読み替えることによって、実践知となっていると感じています」。

「超域イノベーション博士課程プログラム」から育った人材は、新たな時代を切り拓く、これまでにないリーダーとなるかもしれない。教員たちの想像を超え、年々成長を遂げる院生の姿に、そんな期待が大きくなる。