会員限定

それでも米朝の対話は続く 対米批判のボルテージを上げる北朝鮮

✎ 1〜 ✎ 15 ✎ 16 ✎ 17 ✎ 最新
著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小

「ポンペオ氏を米朝交渉から外すべきだ」。米国国務省のポンペオ長官とビーガン北朝鮮担当特別代表は、北朝鮮から聞こえてくる悪口雑言に驚いているだろう。北朝鮮はさらに、ボルトン大統領府国家安全保障担当補佐官に対しても「間抜けに見える」と、対米批判のボルテージを上げる。

米国側は今年2月末のハノイでの米朝首脳会談以降、北朝鮮の無反応ぶりに焦っていた。「首脳会談以降、連絡をしても何の返事もない」。3月下旬、ビーガン氏は「3回目の首脳会談開催のために助言を請う」として訪中した際、中国共産党・政府関係者や研究者に対し、こう漏らした。

ただ「北朝鮮の非核化は、これまでどおり外交的手段で解決していく」とビーガン氏は明言したという。「米国は今後も軍事的な解決方法は採らず、対話で達成するという意味だ」(中国側の面談者)。

北朝鮮が対米批判を始めたのは、4月11日に開催された最高人民会議(日本の国会に該当)がきっかけだ。この時期、北朝鮮は指導部人事を行った。合意なしという不発で終わった首脳会談の責任を問われるのでは、と注目された対米交渉の責任者・金英哲(キムヨンチョル)・朝鮮労働党中央委員会副委員長は指導部に残り、崔善姫(チェソンヒ)・第1外務次官は党国務委員会委員へと昇進した。実務トップだった金革哲(キムヒョクチョル)・国務委員会米国担当特別代表は外務省に戻った。事実上の更迭だ。

「なぜ合意しなかったのか」

それでも金英哲、崔善姫の両氏を残留させたことは、北朝鮮側も米国と対話を続けるという意味だ。そうせざるをえない事情が見えてきた。首脳会談後の3月、訪朝した外国人らは「平壌市民に会うと誰もが、『なぜ米朝は合意しなかったのか』と強く尋ねてきた」と口をそろえる。制裁緩和につながる合意がなかったことに落胆を隠しきれずにいたという。

今年に入りとくに、北朝鮮の経済状況は厳しいとの声が広がっている。コメ価格をはじめ物価全体に目立った変化は見られない。ただ、「外貨購入時のレートがやや上がった」(訪朝した日本人)。レストランでは客が減り、商業施設で販売される高級品の価格にも上昇傾向が見られるという。「富裕層の財布のひもが締まり始めたようだ」(同)。また、「地方に行くと、食料品をはじめ生活物資が足りないようで住民が困っている様子だった」(中国のビジネスマン)という証言も出てきた。

金正恩(キムジョンウン)政権は米国に、段階的な非核化の実施と自国の体制保障を求めている。同時に、北朝鮮の国民は経済制裁の解除による経済改善も望んでいる。それを知る金正恩・朝鮮労働党委員長は、「自力更生」のみを叫んでも限界があることをわかっているはずだ。首脳会談への国民の期待と失望を見ると、交渉を続けて制裁解除・緩和を引き出してこそ「人民の最高代表者」たりえるのだ。

米国は交渉を続ける意思がある。金委員長も交渉は続ける。だが、金委員長と「不思議なほど波長が合う」(崔善姫氏)という、トランプ大統領の本音がよく見えない。そこに金委員長の不満がある。

最高人民会議での施政演説で金委員長は、「米国が新しい計算法を持ってわれわれに近寄ることが必要だ」と明言し、米国側の譲歩を促した。そちらは大統領再選、われわれは経済、互いに利益があるだろう──。これは、トランプ大統領自身の計算法で出した、北朝鮮が受け入れ可能な条件を早く見せてほしい、というアピールだ。北朝鮮が続ける米政府交渉陣へのあしざまな批判には、そんな意味が込められている。

関連記事
トピックボードAD