「平成の30年間で日本のコーポレートガバナンス(企業統治、以下ガバナンス)は決定的に変わった」と話すのは、日本コーポレート・ガバナンス・ネットワーク(CGネット)理事長の牛島信弁護士。CGネットは社外取締役などをトレーニングするNPO法人(特定非営利活動法人)だ。
平成元年(1989年)に社外取締役がいる上場企業は1社もなかったが、現在では上場企業の93%に社外取締役が1人以上存在する(2018年7月13日時点)。ただ、日本のガバナンスがよくなったかは不明だ。人数が増えただけで「実質の改善が見えない」(牛島氏)からだ。
企業統治の優等生が不祥事
世界基準に合わせて導入された日本のガバナンス。先行したのはソニーだった。97年に日本で初めて社外取締役を選任すると同時に、執行役員制も導入した。
ソニーに続いたのが東芝である。執行役員制や社内カンパニー制を導入するとともに指名委員会や報酬委員会を設置。取締役任期を1年に短縮するなどし、東芝は「ガバナンス改革の優等生」と目された。
だが、その東芝で粉飾決算が行われた。パソコン製造や原発工事の会計処理で不正に利益を計上。社外取締役は長年、不正を見抜けなかった。東芝のガバナンス改革は新制度を形式的に導入しただけで、実質が伴っていなかった。経営トップが報酬・指名委員会を主導し、両委員会は形骸化していた。ガバナンスに詳しい早稲田大学の宮島英昭教授は「『ガバナンス改革が進んでいたから不正をする余地はない』という期待は過大だった」と指摘する。
一方、ガバナンス改革が遅れていた日産自動車でも不祥事は起きた。カルロス・ゴーン元会長による巨額の役員報酬の過少記載が発覚したのだ。日産には指名・報酬委員会がなく、社外取締役も最近まで1人しかいなかった。役員の指名権も報酬決定権もゴーン氏に集中。自身の報酬額も決めていたという。
「日産ほどのグローバル企業で指名委員会も報酬委員会もないのは異常。両委員会を設置していればゴーン氏の不正は早期で防げたに違いない」(宮島教授)。役員報酬の過少記載が巨額に及んだのは、ガバナンスへの日産経営陣の認識が甘すぎたためだ。
ガバナンスを強化しても不正は起こりうる。ただ、何もしなければ不正は野放図に拡大しかねない、というのが平成の教訓だ。
13年以降、ガバナンス強化は政府の成長戦略の一環で進められた。これで会社は株主をより意識するようになり、ひいては成長につながると目された。
ガバナンスのハードルは上がる一方だ。19年からは、女性取締役が1人もいなかったり取締役の3分の1以上が社外でなかったりすれば、経営トップの再任に反対票が投じられることになりそうだ。
ただ、形を整えただけでは不祥事を防げないことは証明済み。実質を伴ったガバナンス改革こそが今後の課題だ。
(本誌:山田 雄一郎)























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