フランス保健省はアルツハイマー型認知症(AD)で承認・販売されている四つの治療薬すべてを8月から公的医療保険の対象外とすることを決定した。ADの治療薬の有効性に疑念が生じ始めている。薬剤経済学が専門の東大・五十嵐中特任准教授に日本での影響などについて聞いた。
──薬剤の保険適用についてフランスの仕組みを教えてください。
フランスでは、薬の治療効果などの有効性と副作用など安全性の双方を、「有用性」としてまとめ、保険適用の判断基準とする。有用性は、無治療と比べた絶対的有用性SMRと、すでにある治療と比べた相対的有用性ASMRの二つに分けられる。SMRで国の負担割合が、ASMRで価格そのものが決まる。
SMRは「顕著・重要」「中程度」「軽度」「不十分」の4段階に分けられる。保険で負担される割合はそれぞれ65%、35%、15%、0%。今回、AD治療薬の4剤のSMRが最下位の「不十分」と判断されたことで負担割合が0%、すなわち保険適用外となった。
──4剤が保険適用外となる前兆はあったのでしょうか。
前兆はいくつも存在した。有用性の評価は、おおむね5年ごとに更新される。
まずは2007年。認知症薬に認知機能低下の進行を抑える効果はないと判定された。ただ、社会的・精神的なケアにおける薬物治療の役割が考慮され、SMRは最上位の「顕著・重要」を維持した。
11年の評価でも、施設入所の遅延やQOL(生活の質)改善・延命など、患者にとって意義の大きな効果は明らかではないとされた。一方で、消化器や循環器、精神神経系への副作用など、安全面での課題が指摘された。
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