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「リアル」を求め、街に出よう 誰の味方かフェイスブック

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私事ながら、日本で2カ月暮らし、タイで1カ月暮らす生活を送っている。タイの、あのまったりした空気が何とも心地よいのだが、近年、日常生活の光景が一変した。街中の表通りから屋台が一掃されつつあるのだ。

東南アジアの生活の「リアル」は路上にある。いまだタイ語がちんぷんかんぷんの筆者でも、路上の屋台で麺をすすれば、地元の生活を呼吸できる。地元の人たちには、屋台は濃厚なコミュニケーションの場になっているはずだ。

その屋台を、なぜ、軍事政権が目の敵にするのか。公衆衛生や通行妨害とかが大義名分なのだろう。が、4月中旬、ザッカーバーグCEOが米国議会に召喚されたフェイスブックスキャンダル。あれを見て勘繰りたくなった。

軍事政権はタイの人々を「リアル」から切り離し、ひたすらバーチャルなネット世界に追い込もうとしているのではないか。

ネット民主主義の幻想

東南アジアは人口の半分、3億人がフェイスブックの利用者だ。そしてフィナンシャル・タイムズ紙によれば、東南アジアで最も有効にフェイスブックを活用しているのが、最高権力者たちだ。たとえばフィリピン。大統領の“麻薬戦争”を批判する野党、ジャーナリストはSNSで徹底的に攻撃されている。その「荒らし」には政府予算がついているという。

あるいは、総選挙を控えるカンボジア。フン・セン首相はフェイスブックで970万人のフォロワーを持つ一方、新聞社・放送局を閉鎖し、ついには最大野党を解散に追い込んだ。「リアル」をたたき潰せば、フン・セン首相のフェイスブックは向かうところ敵なしだ。

タイの屋台追放もこの延長線上にあるのではないか。いわゆる「カスケード現象」。SNSは同じ考えを持つ者同士を加速度的に結び付ける特性があり、フェイクニュースが伝わる速度は事実の伝達速度を圧倒する。人々からコミュニケーションの「リアル」を奪い去れば、フェイクの広がりとスピードは倍加するだろう。

さらに4月のフェイスブックスキャンダルは、個人情報がいとも簡単に外部の第三者に“渡される”ことを教えてくれた。収集した個人情報から個人の全体像を再現し、社会心理学的に処理し、ターゲット広告ならぬターゲット(政治)宣伝が展開されたら、SNSは権力と金力を併せ持つ者の最高の武器になるのではないか。

インターネットが生まれたてのころ、すべての人が情報発信できるようになれば、真の民主主義への道が開かれる、という心弾むような希望があった。甘かった。むしろ、寺山修司の言葉をなぞった方がいいかもしれない。「SNSを捨てよ、街に出よう」。生活とコミュニケーションの「リアル」を取り戻すために。

(マイダイ)

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