待遇格差「不合理」判決の波紋 非正規の待遇改善なるか
「格差が不合理かどうかの判断は、賃金項目の趣旨を個別に考慮すべきだ」──。6月1日、最高裁判所第二小法廷は正社員と非正社員の待遇格差が、労働契約法が禁じる「不合理な格差」に当たるかが争われた2件の訴訟の判決で、こうした初判断を示した。
契約社員による「ハマキョウレックス訴訟」では正社員のみに支給する無事故手当など手当6種のうち5種の不支給は不合理とし、下級審より幅広く救済した。一方、定年後再雇用の嘱託社員による「長沢運輸訴訟」では精勤手当や超勤手当の格差は不合理としたものの、大半の待遇差が容認された格好だ。

企業の人事労務担当者がとりわけ行方を注視していたのは、長沢運輸訴訟のほうだ。2013年4月の改正高年齢者雇用安定法の施行で、企業は希望する全従業員に、定年後再雇用、定年引き上げ、定年廃止のいずれかの雇用延長措置を取らなければならなくなった。
厚生労働省の調査によれば、大企業で定年引き上げや定年廃止に踏み切ったのは全体の1割に満たない。9割超は公的給付を加えても現役時代の半額程度に給与が落ち込む、定年後再雇用で対応している。
大手情報システム会社の人事部長は、「定年は従業員の処遇を大きく見直せる一大チャンス。みすみす手放すことはない」と本音を語る。そのため、「もし定年後再雇用の処遇が不合理な格差とされたら、賃金体系を一から見直す必要がある」(同)とされていた。
今回、定年後再雇用の格差はある程度容認される判断が示された。他方、手当については具体的な理由がなければ待遇格差は認められないことが明確になった。
すでに各地の裁判所では、手当の格差を不合理とする判決が相次いでいる。今年2月、大阪地方裁判所は日本郵便の扶養手当の不支給は違法と判断。同社をめぐっては昨年9月、東京地裁が住宅手当や年末年始手当の一部で格差是正を命じていたが、大阪地裁判決ではこれらについても正社員と同額の支払いを命じている。
法施行前の対応必須
5月末に衆議院を通過した働き方改革関連法案。その柱の一つが、正規非正規の待遇格差の解消を図る、「同一労働同一賃金」の実現だ。政府が16年12月に示したガイドライン案では、時間外や深夜・休日労働の手当は同じ割増率での支給を求め、精皆勤手当や食事手当などについては格差を認めないとした。関連法が今国会で成立すれば、大企業は20年4月から、中小企業はその1年後から適用されるようになる。
最高裁をはじめ、各裁判所の判決内容は、このガイドライン案に沿っており、企業は法の成立や施行を待たずに、対応を迫られることになりそうだ。
非正社員は2000万人を超え、労働者の約4割に達する。空前の人手不足の中、企業は待遇改善にどう向き合うのか。今回の最高裁判決は、企業に本気度を問う、警鐘となりそうだ。






















無料会員登録はこちら
ログインはこちら