GDP連動債の発行を急げ 金融危機の衝撃を緩和する
各国がそれぞれの経済力に連動した債券を発行できる時代がやってきた。GDP(国内総生産)連動債のことである。
GDP連動債とは、発行国のGDPに連動してクーポン(利息)や元金が増減する国債だ。(経済が停滞すれば返済額も減るので)経済危機に陥ったときに政府が直面する基本的な問題(国債の債務不履行など)の多くがこれによって解決する。また、(経済が拡大するときのアップサイドは大きく)高いリターンを得られる可能性がある。投資家にとっても魅力的な商品となるだろう。
GDP連動債の市場規模は巨大であり、この点はとりわけ注目に値する。世界の総GDPの時価総額は世界の株式市場の時価総額をはるかに上回る。米ドルで何千兆といった現在価値かもしれない。
ちょうど先日、GDP連動債に関する権威あるハンドブック『ソブリンGDP連動債:その理論的根拠と設計』が英ロンドンを拠点とするシンクタンク、経済政策研究センターによって公開された。共同編集を行ったのは、私とIMF(国際通貨基金)のジョナサン・オストリー氏、イングランド銀行(英中央銀行)のジェームズ・ベンフォード氏、マーク・ジョイ氏。G20(20カ国・地域)の委託研究に基づき、有力経済学者や法律家など20人と協力しながら、まとめた。
私は過去25年間にわたってGDP連動債のようなものを提唱し続けてきたが、実施計画までは示すことができなかった。まさにそれを実現するのが既述のハンドブック『ソブリンGDP連動債』だ。
基本コンセプトはとても簡単。政府がGDP連動債を発行して資金を調達する。企業が株式を発行して資金を集めるのと同じだ。GDP連動債を発行する政府は、その国の経済力に応じて返済を行う。経済力はGDPで示される。
GDP連動債を発行すれば“財政的な余力”、つまり財政危機に対するクッションを生み出すことが可能となる。現在のように国債の支払額が固定されていると、経済危機に直面したとき発行国はにっちもさっちもいかなくなる。過剰債務のせいで追加の資金調達は不可能となり、大規模な緊縮策に追い込まれ、それが経済回復を阻害する、という悪循環に陥る。その最終的なツケは納税者が支払うことになる。
GDP連動債は景気後退に備える保険のようなものだ。10年前にアイルランドやギリシャで火を噴いた債務危機は、仮にこれらの国の債務がGDPに連動していたとしたら、あそこまで悲惨なものとはならなかっただろう。
では、GDP連動債がこれまでほとんど発行されてこなかったのはなぜか。理由は簡単で、金融商品の革新はほかの技術革新と同じくらい複雑で難しいからだ。1980年代までラップトップPCが現れなかったのと同じ理屈である。
『ソブリンGDP連動債』では商品設計の問題を扱っているが、タームシート(条件規定書)を作成するには、一見ささいなようで、実はかなり重大な質問に答える必要がある。たとえば、政府がGDP統計を修正した場合はどうなるのか。統計が期日までに公表されなかった場合は? 従来の国債との優先劣後関係はどうか。GDP連動債は自国通貨建てとすべきか、それとも米ドルなどの主要通貨建てとすべきか、など。
確かに世界経済の回復は進んでいる。だが、リーマンショック後に積み上がった巨額の公的債務のせいで、政府が財政出動によって経済危機に対抗するのは従来にも増して難しくなっている。危機の巨大リスクに対処できるよう、GDP連動債市場の確立に向けて今から動き始めることが大切だ。






















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