「私には子どもが3人いるから、ライフ・シフトは現実的じゃない」。そう苦笑するのが、都内のIT企業に勤める山本信夫さん(仮名・40代)だ。
『ライフ・シフト』の熱心な読者であり、考え方には共感する。しかし、現実的には教育費がかかる時期で、住宅ローンの負担もある。「転職したり独立したりするリスクは、とても取れない」(山本さん)。本に書かれているような、華麗に転身するマルチステージの生き方は、「今の自分には現実味がない」と言い切る。
前項でも指摘したように、『ライフ・シフト』が薦めるマルチステージのキャリアの実践には、日本においては終身型の雇用システムなどが障害となっている。
だが今回、本に共感したり、影響を受けたりしたという複数の人に取材を重ねると、「会社には言いたくないので名前は伏せるが、ライフ・シフト的な活動をしている」という声が多く聞こえた。
他部署の仕事を手伝い 人脈やスキルを構築
冒頭の山本さんも動いていないわけではない。平日夜や週末にIT勉強会に参加。IT界の著名人を招く講演会の運営も無償で手伝う。「勉強会でできるネットワークは財産。ここで会社に依存しない方法を探りたい」(山本さん)。
会社に内証で一歩を踏み出そうとする“隠れライフ・シフト”には、左表のような実例が挙げられる。日常の仕事から離れ、新しい環境で学び直すエクスプローラーの活動については、山本さんのように社外勉強会や読書会を活用するほか、社会人大学院などへの進学、さらに「育休を取ればキャリアは中断するが好機になりうる」といった声もあった。
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