ここ数年、キヤノンの長期格付けは「AA」(米S&P)を維持してきた。日本の事業会社でAAはキヤノンのみで、なみいる日本企業の中で最も財務健全性の高い企業だった。2010年以降、累計1兆円超に上る買収を実現できたのも、長年をかけて築き上げてきた、“最強の財務力”があったからこそだ。
一連の大型買収が始まる直前の09年12月末の貸借対照表を見ると、いかに財務が健全だったかがわかる(図表1-左)。資産のうち半分以上が流動資産で、現金同等物は7950億円。自己資本比率は7割を超える。長期債務はわずか49億円で、ほぼ無借金経営だ。
拡大する
しかし、16年12月末の貸借対照表を見ると、財務の内容が大きく変化したことがわかる(図表1-右)。
全体では、資産と負債の両方が約1兆円増加した。資産で増えたのは「のれん」と「無形固定資産」だ。買収先の純資産額を実際の買収額が上回ったとき、その差はこれら2つの資産に振り分けられる。それが大きく膨らんだのだ。09年と比べ、のれんは約8800億円、無形固定資産は約3300億円増加した。
資産規模の拡大は主に、アクシスと東芝メディカルシステムズの買収額が、両社の純資産を大きく上回ったことで起きた。キヤノンはアクシス買収で約2600億円、東芝メディカル買収で約4900億円ののれんを計上している。
買収後、両社の業績が計画を下回り続けると、のれんと無形固定資産は「減損処理」を迫られる。資産計上額を引き下げ、その分の損失を計上しなければならないのだ。キヤノンは米国会計基準を採用しているため、積み上がったのれんは買収先の業績が著しく悪化したとき一気に減損する(日本の会計基準なら定期的に償却)。したがって継続的に減損リスクを抱えることになる。
この記事は有料会員限定です
残り 686文字
