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2016年のエクイティファイナンスは半減 ゼロ金利、成長期待なく企業の資金調達は急変

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銀行からの借り入れや社債の発行によるデットファイナンス(負債調達)と並んで、企業の主要な資金調達手段となっているのが、株式の発行などによるエクイティファイナンス(資本調達)だ。ところが、2016年のエクイティファイナンスは2.9兆円、前年比49.4%減とほぼ半減した(図表1)。

[図表1]
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背景には、いくつかの要因がある。金額的に大きな影響を与えたのが、IPO(株式新規公開)の規模の差だ。

15年は郵政3社の上場という調達額1.4兆円の超大型案件があった。これに対して16年はJR九州(同4160億円)とLINE(同1347億円)が目立った程度。案件数では15年の98に対して16年が93と遜色なかったが、超大型案件の有無が金額の大きな差となって表れた。

ただ、IPOにばかり気を取られていては、エクイティファイナンス半減という問題の本質を見失う。IPOによる調達額は1.1兆円で前年比37.4%の減少だった一方、既上場企業の公募増資などによる調達額は1.2兆円(同49.6%減)と、より減少率が大きかった。

一因として考えられるのが、日本銀行の異次元緩和によって金利が歴史的な低水準まで下がったことに伴う、社債発行へのシフトだ。

日本企業の普通社債による資金調達額はここ数年、15兆円前後で推移してきたが、日銀がマイナス金利政策を導入した16年は19兆円と急増した(図表2)。固定金利でより利幅の大きい投資商品への国内機関投資家のニーズが高まり、これまでは年限5年程度の社債しか発行できなかった低格付けの企業も長期の社債を発行しやすい状況となった。

[図表2]
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「マイナス金利政策に伴って、企業はデット調達が一段と容易になった。金融機関も企業に有利なレートで融資してくれる。その分、エクイティファイナンスが落ち込んだ格好だ」(SMBC日興証券の吉良俊志・資本市場本部長)

15年に導入されたコーポレートガバナンス・コードの影響を指摘する声もある。同コードにより、既存株主が保有する株式の価値が希薄化しかねないエクイティファイナンスについて、株主の権利確保の観点から、企業は目的や使途について十分な説明を求められる。これが企業の負担感を増した、というわけだ。

だが、この観点について、ある大手証券会社のエクイティファイナンス担当者は「株主が納得できる成長戦略を掲げた前向きな調達であれば、むしろ株価が上がる要因になっている」と指摘する。そのうえで、「企業経営者が成長戦略を描くには、経済の先行きに対する自信が必要。金利がゼロ%でも0.1%でも経営者の行動に大差はない。市場が拡大するという絵を政府が描き、投資を促す流れを作っていくことが何より重要だ」と言葉を継ぐ。

エクイティファイナンス半減は、金融政策偏重で有効な成長戦略を欠く政策のチグハグさが企業行動へ反映されたものといえるだろう。

デットファイナンス 社債発行など他人資本による資金調達。将来的に返済義務を伴う反面、経営に対する出資者の発言権は小さい。
エクイティファイナンス 新株や新株予約権付き社債(CB)など、株主資本の増加をもたらす資金調達。原則として返済期限はない。
コーポレートガバナンス・コード 上場企業の企業統治の指針。株主の権利・平等性の確保などをうたい、関連する情報の開示を義務づけている。
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