大統領選が残した米国内外の傷跡は深刻だ。米国政治が専門の久保文明教授に今後の展望について聞いた。
東京大学法学部教授 久保文明
インテリが聞くと、トランプ氏の発言は無茶苦茶だが、高卒の人には単純明快でわかりやすい。ややこしい政策論ではなく、メキシコ国境の「壁」だとか反TPPだとか。メッセージは通りやすいんだと思う。
さらに、今回は一種の3点セット、つまり反不法移民、反自由貿易主義、反国際主義を掲げた。この組み合わせが、ウィスコンシン州やミシガン州など、民主党の強い地域でトランプ氏支持を広げた。
失業率は5%を切り、底流として米国の経済指標は決して悪くない。しかし、今回の出口調査では62%の人が「米国は悪い方向に行っている」と答えている。つまり、国民の間に非常に大きな不満があって、変化を求めている。そういう人たちにとって、クリントン氏がどれだけ変化を象徴する候補者だったか。
実質家計所得は1999年をピークにいまだ回復していない。そこに不法移民の問題が加わり、彼らのせいで自分たちは失業したと思い込む人たちが出てくる。
トランプ氏の強かったオハイオ州南部には、高卒の半分くらいの人に職がない、昔は時給30ドルを超える仕事があったが、今は10ドルの仕事しかないとか、そういう白人のコミュニティが点在している。そこでトランプ氏は爆発的な強さを発揮した。何となくの気分転換のような変化ではなく、彼らは絶望的で、やむにやまれず変化を求めている。トランプ氏がよい政治家だとは決して思っていないが、何か変えるとすると彼だろうと。そういう心理ではないか。
カリフォルニア州知事だったレーガン元大統領と異なり、トランプ氏は統治をまだ知らない。どこまで自分が判断し、部下に任せるか。今までは勘でしゃべっていたが、そのまま行くのか、それとも専門家の言うことを聞いて大胆に修正するのか、まだわからない。
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