欧州経済に精通する中島厚志氏は、トランプ新大統領を生んだ米国の土壌と、ブレグジット(英国のEU〈欧州連合〉離脱決定)の共通点を指摘。さらに、来春の仏大統領選挙に与える影響を示唆する。
経済産業研究所(RIETI)理事長 中島厚志
今回の大統領選挙の結果は、米国の経済格差がいかに深刻かを如実に示している。2000年以降、米国では下位20%層の所得を上位20%層が総取りするような形で所得格差が拡大した。ドイツ、英国、フランスと比べても米国の状況は深刻で、所得格差に対する不満は強い。
米国で貧困層を対象とした食料補助金制度「フードスタンプ」の利用者が、00年の650万世帯(全世帯の6.2%)から13年には1570万世帯(同13.5%)へと激増したことからも、米国内で貧困が拡大していることが見て取れる。
そのためトランプ氏、クリントン氏とも経済的弱者に配慮した政策を打ち出さざるをえなかった。トランプ氏の政策は大規模な減税とインフラ投資、大胆な歳出拡大を通じて景気を盛り上げつつ、保護主義を通じて輸入品や移民から雇用を取り戻すというもので、レーガノミクス的な発想に近い。
トランプ氏は移民の制限を打ち出しているが、米国の労働力人口の伸びは近年やや鈍化している。背景にあるのは若年層の就学率向上だ。リーマンショック以降、若者の就労機会が乏しく、学歴を高めて高い所得を得ようという動機が強まった。
そこで労働力の減少を補ったのが移民労働者だった。彼らは農業やサービス業などの季節労働や低賃金の職に従事する傾向が強い。製造業の空洞化で職を奪われ、今回トランプ氏に投票したような米国人が、季節労働・低賃金の職種に大量に流入するとは考えにくく、今後も行き場を求めてさまよい続けることになりかねない。移民の流入制限は、中長期的には経済成長の足かせになりうる。
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