4月初旬。リアルとネットの融合を進めるオムニチャネル事業の責任者、鈴木康弘セブン&アイ・ホールディングス(HD)取締役は長野県にいた。同県のセブン‐イレブンの店舗数軒を回り、加盟店オーナーから直接話を聞くためだ。
康弘氏は鈴木敏文・HD会長の二男。そして長野県は敏文会長の出身地だ。1泊2日の日程の間、康弘氏は上田市にある敏文会長の実家などゆかりの地も訪れた。地元の歓迎ぶりは相当なものだったという。
康弘氏は昨年から、約3カ月に1度のペースで有力店を視察して回っていた。今年初めにも北海道の店舗を訪問したばかり。目的の1つはオムニ戦略を実践するために現場のニーズを把握することだが、グループの幹部は「康弘氏には、コンビニの現場がわかっていないという負い目がある。それを払拭したいのだろう」と話す。
オムニ事業はグループ全体の戦略だが、その実働部隊はセブン-イレブン・ジャパン(セブン)に置かれる。組織上は加盟店を支援するオペレーション本部の下。オムニ戦略の肝がセブンの物流システムや店舗網にあること、そして単にネット上で商品を売るだけでなく、セブンの店舗の売り上げとオーナーの収入底上げにいかに結び付けるかに力点が置かれていることを表している。
当時のオペレーション本部管掌役員は、5月にセブン社長に昇格した古屋一樹氏。「敏文会長には、信頼する古屋さんに康弘さんを預けコンビニ事業を勉強させたいという思いもあったんじゃないか」(セブン幹部)。
10年間目立った成果なし
康弘氏は現在51歳。ソフトバンク(現ソフトバンクグループ)在籍中の99年にネット書店、イー・ショッピング・ブックスを設立した。康弘氏のアイデアが孫正義ソフトバンク社長の目に留まり、社内ベンチャーとして立ち上がった。しかし事業は赤字続き。2006年にはセブン&アイグループ入りしたが、「孫さんから赤字の穴埋めを要請され、敏文会長が断り切れなかったのが実態だった」(当時を知るセブン元幹部)。
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