米シカゴ市郊外。貧困層が多く住むエリアに「シカゴハイツ幼児センター」(詳細は「幼児期の実験で公教育を変革する」)はある。単なる幼稚園ではない。世界が注目する、壮大な「実験」が行われているのだ。
同センターは2010年、シカゴに在住するヘッジファンドマネジャーの寄付によって設立された。毎年抽選で選ばれた3~5歳児約500人が入園する。全員が米政府の定める貧困ライン以下の家庭の子どもたちだ。1クラスの児童数は15人、そこに教師、助手が1人ずつつく。
「実験」は三つに分かれる。まず学力につながるスキル(認知スキル)を鍛えるクラス。数字の数え方や書き方、読書、英語などを教える。次が学力以外のスキル(非認知スキルといわれる)を鍛えるクラス。共同作業などを通じてチームワークや粘り強さ、忍耐力などを養う。
最後に親向けカリキュラムだ。センターに通っていない子どもの親が参加し、まず親を教育し、親が自ら子どもを教育するよう指導する。
実験では幼稚園で学んだことが子どもたちにどんな影響を及ぼすのか、生涯にわたって追跡調査する。3グループのほか、プログラムに参加できなかった子どもたちとの比較を通じて、教育効果を把握する。
早期の教育が子どもに決定的な影響を与える
今、米国では子どもに対する就学前教育が、その後の人生に決定的な影響を与えるという研究が注目を集めている。そして大事なのは、学力やIQ(知能指数)だけでなく、目に見えない非認知スキルであることがわかってきた。実験を主導したシカゴ大学経済学部のジョン・リスト教授(インタビューは「幼児期の実験で公教育を変革する」)は、「プログラムに参加した子どもたちが大人になったとき、労働者としての生産性が高まり、犯罪に手を染める可能性が減るなど、大きな成果が出るだろう」と語る。
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