洋の東西を問わず、最も希少性のある経営資源は経営者だと思う。優れた経営者は余人をもって代えがたい。皆、簡単にまねできない“芸風”を持っている。
柳井正ファーストリテイリング会長兼社長、永守重信・日本電産会長兼社長、孫正義ソフトバンクグループ社長。彼らが日本を代表する経営者であることは論をまたない。柳井さんも永守さんも、ソフトバンクの社外取締役を兼務しているが、あれは社外だから意味がある。もし3人が互いに会社を換えて経営すれば、3社の業績は低下するだろう。社長の仕事とはそういうものだ。
優れた経営者は具体と抽象を往復する
抽象度を上げて本質にたどり着かないと、優れた経営者の共通点は見つからない。たとえば物事の選択の基準が、良しあしよりも好き嫌い。求められる能力が、スキルよりもセンス。スキルは英語力のように開発する標準的方法があるが、センスは簡単には身に付かない。洋服と同じでセンスのない人が頑張ると、かえって事態が悪化する。
センスの中身は何か。僕は「具体と抽象の往復運動」だと思う。商売なので課題も解決法も具体的なのだが、優れた経営者はそれを抽象化した論理に置き換えることができる。
たとえばユニクロで、あるシャツが売れていないとしよう。そこで昨年の販売データや競合相手の売れ筋を調べるのは、“具体の地平の横滑り”にすぎない。
でも、柳井さんはおそらく一言「要するに問題の本質はここにある」。これまでさまざまな出来事に直面し、成功や失敗を繰り返す中で、「要するに」という抽象(論理)の引き出しをたくさん持っている。この引き出しの豊富さが、優れた経営者のセンスの正体だと考えている。
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