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“引き金"は新事業の失敗 不正の傷口広げた東芝

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6月12日のリリースでは、特別調査委の調査と自主チェックで、不正の詳細が明らかになった(撮影:尾形文繁)

東芝は一連の「不適切な会計」問題で6月12日、さらなる利益の減額修正とその詳細を明らかにした。

5月に特別調査委員会の調査で判明した、9件・500億円強の減額修正が、512億円まで拡大すると発表。さらに、連結子会社を含む585社を対象にした自主チェックで、新たに12件・36億円も発覚した。現時点では累計約550億円の過年度決算の訂正が見込まれる。

案件の多くはインフラの工事進行基準に関するものだった。「受注時に損失の可能性を認識していたにもかかわらず工事損失引当金を計上しなかった」「具体的な裏付けのないコスト削減策を原価総額に織り込んでいた」(東芝)ことなどが主な原因である。

550億円の中で過半を占めたのが、スマートメーター(次世代電力計)と、ETC(自動料金収受システム)だ。いずれも東芝が期待を寄せた新事業といってよい。

2011年の東日本大震災を機に、政府主導で導入されたのがスマートメーターだ。

東芝は同年にスイスの電力計大手、ランディス・ギアを23億ドルで買収。スマートメーターでは、ハードを関連企業の東光東芝メーターシステムズが請け負い、ランディスの通信技術を使っていたが、開発は難航。13年9月に東京電力から受注したものの、不具合が発生し、損失を膨らませる結果になった。 苦戦していたのは、ETCも同様である。

「入札金額が非常に安く、本当にできるか心配していた」。競合他社が明かすのは11年11月に東芝が落札したNEXCO西日本の案件。ETCを第2世代に更新する際に東芝が受注した。技術評価点では、セキュリティ面で秀でる三菱電機などが上回る一方で、東芝は最高値の116億円よりも約16%安い97億円で入札、価格評価点でトップを取った。しかし、無理な受注は自らの首を絞めた。

原発頭打ちの陰で

既存事業の頭打ちで新分野開拓を急いだが、思うように成果を出せなかった東芝。

東芝にとって柱の一つは原子力発電所事業だ。06年に米ウエスチングハウスを54億ドルで傘下に収め、09年には16年3月期までに同事業で売上高1兆円との目標を掲げていた。が、大震災を受け、国内で原発新設がストップ。12年には18年3月期へ達成時期を先送りした。現状では6000億円前後にとどまっている。もう一つの柱の半導体事業も利益のブレが大きい。

こうした事業環境悪化の中、予算目標の必達をトップが方針に強く掲げたこと、また現場が無理に数字を作っても、それをただす「内部統制が機能しなかった」(田中久雄社長)ことが、東芝を不正に走らせたといえる。

減額修正は自主チェック分を含め、10年3月期から14年3月期まで。現在の田中社長ばかりでなく、09年に社長に就任した、佐々木則夫・現副会長の時代に当たる。

実は株式市場では東芝株が底を打っている。第三者委員会による7月の調査報告で、金額の規模が極端に拡大することは見込みにくい。「もう市場の目は、不正会計が行われていた、当時の経営者が責任を取ることに移っている」(JPモルガン証券の森山久史・株式調査部長)。

経営責任の明確化と企業体質の改善。東芝の再起はこの二つの実現以外にない。

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