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挑む「ワーテルロー」 英キャメロン首相の

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ちょうど200年前の今月、ワーテルローの戦いでナポレオンは英ウェリントン公爵率いる連合軍に屈した。この戦いが将来の欧州を形作ったが、英キャメロン首相は同じ役回りを演じそうだ。

保守党政権は、欧州連合(EU)加盟を継続するかどうかを問う国民投票を2017年までに行うと公約した。離脱しないにせよ、英国が欧州から離れていく動きは止まらないだろう。ほかの地域により魅力的な市場機会があれば、欧州諸国の多くもそれに倣うだろう。

EUが英国の要求(移民労働者の利益制限、シティに不利益となる金融規制の緩和、「より緊密な連合」の否定)に応じれば、欧州の各機関を支える条約の根本的な変更となる。「ブリグジット(英国のEU離脱)」は、欧州の経済と政治の断層をあらわにし、後戻りはできないだろう。

第2次世界大戦を受けて、欧州諸国の利益が一致した。にもかかわらず、共同軍隊を通じての政治統合は1954年に失敗に終わり、統合には経済的な共通基盤が重要であることが浮き彫りにされた。

その結果が91年のマーストリヒト条約である。しかし、その後の通貨統合では欧州の凋落を止められなかった。米国は急速に生産性が伸びている最中だったし、アジアでは経済発展が始まっていた。ユーロ危機は08年に始まったが、加盟国のGDP(国内総生産)成長率は現在に至っても依然として世界のほかの地域より低いままだ。

いかなる制度の枠組みも、有形の利益をその構成員に与えないかぎり存続しえない。チュニジアの工芸品ギルドは、19世紀の産業化の流れに適応できず衰退した。そしてギルドのマスターを示す「アミン」は、中身のない組織の飾りとしての名称にすぎない。欧州の各機関も、同じ運命に直面するかも知れない。

第2次大戦の影響下での欧州統合は賢明で重要な偉業であった。だが21世紀には新しい統合の論拠が必要である。ほかの連邦国家のような政治統合がないため、EUには別の有形の利益が必要となる。

欧州の人々が「より緊密な連合」という呪文を唱えるだけなら、衰退は止まらない。プーチンによるロシア再興への恐怖からではなく、共通の有形の利益に基づいた新しい統一の目的がなくては、「欧州のアミン」もまた、仕事を失うだろう。

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