学生のアイディアが救急医療を変える? オープンデータが自治体の課題を解決する時代

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高齢化社会を迎え、ますます救急医療の重要性が高まっている。しかし現場到着までの時間の上昇傾向や搬送先病院が見つからないなど、抱える課題も多い。
こうした課題が、学生の分析とアイディアで解決されるかもしれない。佐賀県を舞台に進められる救急医療改善への取り組みを取材した。
学生の現場視察

他県に先駆けて救急医療の可視化を実現

急病で倒れ、一刻を争う状況になったとき、少しでも早く病院に着きたいと誰もが思うだろう。しかし、実際のところ、通報から病院到着までの搬送時間は年々上昇している。消防庁の統計によると、1999年には27分台だった救急搬送時間は、2012年には38分42秒と過去最悪の結果となった。

救急搬送時間が延びている理由は様々だが、その1つに、患者を病院に運びたくても病院側の都合で受け入れができず、その結果いくつもの病院に問い合わせをするという、いわゆる「たらい回し」の問題が全国で課題となっている。

こうした事態に対し、自治体も手をこまねいているわけではない。中でも画期的な取り組みとして注目されているのが、救急隊員にタブレットを持たせている佐賀県だ。現場に到着すると、隊員はタブレットで「99さがネット」にアクセス。患者の症状などを入力すると、受け入れに適切な医療機関の概要や救急患者の受け入れ状況が表示される。搬送が終わると、隊員は情報をタブレットで再び入力。これにより県内の救急患者の受け入れ状況がリアルタイムで把握できるシステムとなっている。

このシステムの導入により、佐賀県では、1回の電話で受け入れ先が決まらなかった件数が減少し、搬送時間も1分以上短縮されたのだ。この成功を見て、他の自治体でも同種のシステムの導入が進んでいるという。

なぜ佐賀県では他県に先駆けてこうしたシステムが導入できたのだろうか。導入に尽力した佐賀県 統括本部 情報・業務改革課の円城寺雄介氏はこう語る。

「そもそも救急搬送については、きちんとしたデータがなく、何か対策をとろうとしてもどこから手をつけてよいかわからない状況にありました。そこでまずデータをきちんと集め、救急搬送の現状を可視化することから始めようと思ったのです。ちょうどその頃、タブレットが普及しはじめたことも好都合でした。ノートPCは救急車に置くには大きすぎますし、スマートフォンでは緊急時に操作がしにくい。タブレットならば、ある程度見やすく、操作も簡単ということで、隊員たちの間にも違和感なく受け入れられました」

佐賀県 統括本部 情報・業務改革課
円城寺 雄介氏

データを可視化することで、救急医療の改善がもたらされた。しかし円城寺氏によれば、このシステム導入の効果はそれだけではないという。

「救急搬送に関するデータを収集したところ、患者の2/3が高齢者であるとか、救急依頼の時間は日中が多いなど、いくつかの傾向がわかってきました。また地域によるバラツキなどもわかってきたため、現在の病院数ではどこに限界があるかも見えてきました。費用対効果も具体的にわかるようになったため、様々な政策を検討した結果、2014年1月のドクターヘリの導入につながったのです」

進化するITと現場の熱意の融合が、重要性を増す救急医療の世界を大きく変えようとしている。しかし救急医療の改善はこれにとどまらない。佐賀県の取り組みはさらに進化しようとしている――それも学生のアイディアによって。

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