(産業天気図・造船)鋼材の価格上昇に加えて、供給逼迫が収益圧迫

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造船業界は現在、豊富な受注を抱え、各社は超繁忙状態にある。2003年末の手持ち工事量は3596万トン。昨年の竣工量は1225万総トンだから、ほぼ3年分の受注残になる計算。ただし、業績的には潤っておらず、「利益無き繁忙」状態と言える。理由は低い船価にある。というのも、各社のドックを埋めている受注の中味は2000年前後に韓国との激しい受注競争のなかで取ったものが中心だからだ。加えて、その後の円高も採算を圧迫。低船価にもかからわず、造船各社が活発に受注した背景は、仕事量の確保もさることながら、タンカーのダブルハル化など安全・環境規制の強化による発注量の増大があったためだ。
 昨年あたりから高度成長を続ける中国による資材の輸入量急増に伴う船舶量の不足から海運会社の大量発注が続いている。そのため船価も好転してきているが、これが即、造船各社の業績には結びつかない。各社のドックはほぼ満杯のため、今受注しても完工までは3年以上の年数がかかるためだ。
 加えて、ここへきて鋼材問題が新たな収益の圧迫要因として浮上してきた。船舶建造の原価のうち、鋼材価格は約30%と言われるが、中国を中心とした鉄鋼需要の増大から造船の主力材料である厚板価格の値上がりが避けられない情勢。各社2004年度の鋼材価格については決着したと言われるが、最低でも10%の値上がりが見込まれている。さらに、厚板以外の資材価格の上昇も続く見込みだ。しかも、ここへきて新たに鋼材の供給逼迫という事態も出てきており、造船業界は調達量そのものに頭を悩ませている。いずれにしても、鋼材問題は造船業界の収益押し下げ要因になることは必至だ。
 このため、各社は資材の使用原単位の引き下げや工程数の削減などにより原価低減を進める。また、環境規制の強化により、2004年1月の契約分から、従来はタンカーだけだった船底のダブルハル化をバルクキャリアにも適用するという動きがある。受注が満杯状態になっていることに加えて、新たな不確定要因の増加で、造船業界では現在、受注の様子見姿勢が強まっている。
 ところで、90年代以降、世界の造船業界を2分、トップ争いを続けてきた日本と韓国だが、ウォン安、円高を背景とした韓国の大幅な受注増から、韓国が完全にトップの座を占めるようになっている。今年1~3月の受注量は韓国が526万総トンに対して、日本は246総トンという具合だ。
【日暮良一記者】

(株)東洋経済新報社 電子メディア編集部

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