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武蔵野大学 工学部開設 総合大学として第2ステージへ

  • 制作:東洋経済企画広告制作チーム
今年、創立90周年を迎えた武蔵野大学が、その歩みを加速させた。今年4月の法学部、経済学部の開設に続き、来春には新たに工学部を開設する。数理工学、環境システム、建築デザインという、ユニークな学科構成だ。
9学部14学科を備えた総合大学として、新たなスタートを切る。だが、これも一つの通過点に過ぎないのだろう。教育を充実させ、多くの優れた人材を輩出するとともに学術研究で社会の発展に貢献し、総合大学としての存在感を強めていく、という軸がぶれることはない。武蔵野大学の歩みは、総合大学としての第2ステージに入る。
2020年、そして未来へ
社会を変革する数理工学
【主催】 武蔵野大学環境研究所
【後援】 臨海副都心まちづくり協議会
【協力】 独立行政法人産業技術総合研究所
[基調講演]  産学官連携を通じたイノベーション創出に向けて 八木 康之氏
[パネルディスカッション]
  岡本 龍明氏 西川 正子氏 西成 活裕氏
[コーディネーター]
  薩摩 順吉氏

異なるセクター間でのコミュニケーションから
イノベーションが生まれる

産業技術総合研究所
臨海副都心センター所長
八木 康之氏
(専門:プラズマ理工学)

11月5日、武蔵野大学有明キャンパス3号館大教室において、臨海副都心産官学連携シンポジウム「社会を変革する数理工学」が開催された。来年4月に予定されている武蔵野大学の工学部開設を記念したこのシンポジウムは、寺崎修学長の挨拶に続き、産業技術総合研究所(産総研)臨海副都心センター所長・八木康之氏による基調講演が行われた。

産総研で実際に多くの産官学連携を体験している八木氏は、「基礎研究、応用研究などさまざまな段階で発明・発見がなされているが、一人の研究者が世の中から隔絶した環境で研究しているのではない」とし、多様な人とのコミュニケーションの重要性を指摘。「企業や行政、大学など異なるセクター間でのコミュニケーションからイノベーションが生まれる」と語った。

そして産総研の役割は、科学分野の発明・発見を産業界に橋渡しすることと定義。持続可能な社会の構築をミッションに掲げ、そのためにグリーン・テクノロジーとライフ・テクノロジーの研究をしていると説明した。そのうえで八木氏は、産総研が開発したパワー半導体素子の量産技術を企業に提供して量産化をしたケースや、産総研と海外の大学が共同で開発した糖鎖バイオマーカの技術を用いて企業が試薬を開発したケースなどを挙げるとともに、武蔵野大学ともライフサイエンス分野で共同研究を行っていることを紹介した。
また、武蔵野大学の工学部開設に祝意を表し、「たとえば、環境にやさしい建築デザインなどを学科間連携により数理モデルで提案してほしい」と期待を表明した。

データサイエンティストの育成が急務

NTTセキュアプラットフォーム研究所
岡本特別研究室長
岡本 龍明氏
(専門:暗号理論)
東京慈恵会医科大学
臨床研究支援センター
准教授
西川 正子氏
(専門:医学生物統計学)
東京大学
先端科学技術研究センター
教授
西成 活裕氏
(専門:渋滞学)

基調講演に続いて行われたパネルディスカッションでは、最初に3人のパネリストが自己紹介を兼ねてそれぞれの研究テーマなどについて語った。

30年ほど前から暗号とセキュリティの研究をしている岡本氏は、「現在は第3次産業革命の真っただ中にあり、そのベースになっているのが数理的知見」という見解を披露。「かつて数理的知見は特許として認められなかったが、最近は数学的アルゴリズムが特許として認められるようになり、暗号も特許になる」とした。そして「ネットワークシステムはデジタル情報をベースにしたバーチャルなものであり、バーチャルシステムに役立つ理論こそが、数理科学や数学である」と結んだ。

医学生物統計学が専門の西川氏は、データサイエンティストの育成と医学生物統計学について解説。「日本は戦後、米国から統計的品質管理を学び、日本流にアレンジして活用した。それが高度成長につながり、逆に日本流の品質管理を今度は米国が学ぶという状況が起きた」と紹介した。また、武蔵野大学が「数理工学コンテスト」を実施していることに触れ、データサイエンティスト育成の意義を強調。統計的手法の活用が、医療領域にも貢献していると語った。

最近はテレビ出演などメディアへの登場も多い西成氏は、数学や物理の基礎を使って現象を解析する現象数理が専門。「現在、さまざまな現象に対して数理的知見が求められており、大きな可能性がある」と指摘。たとえば、渋滞を0と1で抽象化することにより、その解消法を研究していると紹介した。そして実際に車を使った実験で、渋滞を起こさない走り方を立証。さらに、一つの部屋に大勢の人間がいるとき、出口付近に障害物を置いたほうが、より早く全員が部屋から出られることも明かし、会場を驚かせた。

現場を知らずに数理モデルを使っても
うまくいかない

武蔵野大学教授
薩摩 順吉氏
(専門:応用数理)

この後、武蔵野大学教授の薩摩氏がコーディネーターを務めてディスカッションが行われ、岡本氏は「コンピュータと通信が世の中を変えた。そのベースとなるのがデジタル情報だ。自分たちの研究グループのメンバーは半数以上が大学の数学科で数学を学んだが、数学的教育を受けた人は応用がきく。武蔵野大学の工学部では、論理的思考ができる訓練を重視してほしい」などと語った。

また西川氏は「ビッグデータを分析した結果の信頼性も考えないといけない。ビッグデータをどれくらい信用してどういう分野で使うか、教育の中で触れていただければ」とコメント。「武蔵野大学では、各学部の先生や学生が共同で研究する分野横断型の取り組みと、基礎的な教育をしっかりして足腰を鍛えてほしい」と述べた。

西成氏は「実際にはできないことも、コンピュータ上で仮想的に実験することができる。そのためにはモデリングがしっかりしていないといけない。しかし、現場を知らないで数理モデルを使った研究をしてもうまくいかない。工学部では、いろいろな企業を回り、現場を見る実習を勧めたい」と提言した。

最後に会場からの質問に答える形で薩摩氏が「大切なのは基礎をしっかりと身に付けること、そしていろいろ試みて失敗すること」と述べ、「数理工学科を起点として産官学連携にも積極的に取り組んでいきたい」という決意表明をし、シンポジウムは盛況のうちに幕を降ろした。

top interview
9学部14学科の総合大学として
一層の教育の質向上を図る

― 2003年に武蔵野女子大学を武蔵野大学に名称変更し、その翌年には共学化されました。来春には9学部14学科となります。この間の変化をどうご覧になっていますか。

武蔵野大学学長
寺崎 修
1945年生まれ。慶應義塾大学大学院法学研究科政治学専攻修士課程修了。法学博士。専門は日本政治史、日本政治思想史。駒澤大学法学部教授、慶應義塾大学法学部教授を経て同大学名誉教授。2008年より現職。

寺崎 キャンパスの雰囲気がすっかり変わりました。男子学生が増え、女子学生にも良い刺激になっています。たとえば今秋、本学の女子学生が隊長を務める登山隊がヒマラヤの未踏峰に挑み、初登頂を成功させました。高い目標を掲げてチャレンジする学生が増えてきており、頼もしい限りです。

― 来年、開設される工学部はどのような特徴があるのでしょうか。

寺崎 「数理工学」という新しい学問領域の学科を設けたことが大きな特徴です。この学科では、数理工学の専門能力を身に付け、現実社会で直面するさまざまな課題を解決できる人材を育成する方針です。従来の学部もそうでしたが、工学部の先生方には、大学院でも指導ができるレベルの方をお招きします。十数年で総合大学まで到達できたのは嬉しい限りですが、第2ステージに入るこれからは一層教育の質を向上させないといけません。

大学に対する最終的な評価は、いかに卒業生が社会に貢献できるか、社会で活躍できるかにかかってきます。それを端的に表すのが国家試験などの成績ですが、本学では看護師国家試験の合格率が100%に達しているほか、薬剤師国家試験や社会福祉士国家試験などでも全国平均を大幅に上回る高い合格率を誇っています。そうした成果が残念ながらまだ一般にあまり知られていないので、これからは情報の発信にも力を入れていこうと考えています。

― 武蔵野BASIS(ベイシス)という教養教育システムが効果を生んでいると聞きました。

寺崎 学部横断型の教養教育を目指したもので、学部の枠を取り払い、全学部の学生が混ざって1年次に受講します。目玉の授業では35クラス編成で7分野を学び、講義の後にグループワークで討議します。これらは、教員の提案から生まれたもので、委員会を立ち上げ、学問領域の壁を乗り越えながら、運営をしています。教員たちが積極的にかかわる武蔵野BASISは、ほかでは真似のできない仕組みだと自負しています。学生たちに話を聞くと、学部や学科の違いを超えた友人関係が生まれたと話してくれます。学生にとってこれは大きな財産になるのではないでしょうか。大学の一体感を強めるうえでも、この教養教育は大きな価値を生んでいます。

臨海副都心の中央に位置する有明キャンパス