交通事業者や介護施設がマクニカと連携する理由 沿線MaaSや介護DXで描く「豊かな未来」とは

AIや自動運転などの先端技術が社会に実装されるようになってきた。こうした指数関数的に成長する技術は「エクスポネンシャルテクノロジー」と呼ばれ、一事業者の生産性向上や業務効率化だけでなく、社会課題を解決する手段としても期待されている。いち早く実践を進めているのがマクニカだ。半導体商社としてのイメージが強い同社だが、柔軟に先端技術を活用し、幅広い領域の事業者や自治体との共創を積極的に進めている。今回はその中から、相鉄グループおよび青森で医療・介護・福祉サービスを展開する慈恵会の事例を紹介する。

地域の活性化を促す「相鉄」の沿線MaaS

神奈川県を基盤に、鉄道やバス、住宅、スーパーなど生活に密着したサービスを展開する相鉄グループは現在、相鉄沿線における魅力ある街づくりに向けて、自動運転バスなど、MaaS(モビリティ・アズ・ア・サービス)の取り組みを推進している。

相鉄バスでは、バス業界としてはかなり早い時期から自動運転に取り組み、自社所有した自動運転バスを用いて実証実験を進めてきた。2019年9月に横浜市で開催されたイベント会場へのシャトル便として乗客5000人を運んだ実績を上げると、20年7月には人や自動車が入ってこられない閉鎖環境下の道路において、運転席を無人にした大型自動運転バスの走行を実施。

相鉄バス
企画・安全部 係長
高橋 潤也

さらに同年10月には人や自転車、自動車が普通に往来する一般的な道路環境下で同様の実験を敢行し、いずれも成功を収めた。その経験から、「自社のみで自動運転化を進めることの限界に気づいた」と相鉄バス 企画・安全部係長の高橋潤也氏は話す。

「いくら車両の完成度を高めても、道路インフラが整っていなければ走れません。道路インフラ側により安全性を高める技術を整備しようとすると、運行事業者としての当社の立場を超えてしまいます。自動運転を社会に実装していくには、ふさわしい役割分担を定める必要があると考えています」

また、新たなモビリティサービスを実現するに当たり、街の至る所を大型自動運転バスが走行できるかを考えると、現在のところ難しいという。自動運転とはいえ、大型バスで住宅街の狭隘(きょうあい)道路や坂道を走行するには、ドライバーの技量が求められるからだ。

相鉄ホールディングス
経営戦略室 DX・ICT推進担当 課長
塩崎 匠

解決策として、住宅の多い各地域と市街地との間に中継拠点を設け、市街地から中継拠点までの間にある幹線道路などは既存の大型バスを活用し、中継拠点から各地域を結ぶルートは、マクニカが取り扱っている中小型自動運転バス「ARMA(アルマ)」(NAVYA社製)をオンデマンドで使うことなども含めて、幅広くさまざまに検討している。相鉄ホールディングス 経営戦略室DX・ICT推進担当課長の塩崎匠氏は次のように展望を語る。

「自動運転で提供する『移動』というものはあくまでも手段です。目的となる場所で楽しんでいただくなど、移動と目的を連携して提供することで、豊かな生活につなげていくことも重要だと思っています」

各地域と市街地をつなぐハブとなる中継拠点を設け、路線バスと自動運転バスを効率的に利用する構想を描く

こうしたMaaSの実現によって、新たな消費が生まれると地域が活性化し、魅力あふれる街へと発展する。相鉄グループでは、生活に密着した事業を展開しているグループ各社の多様なデータも活用しながら新たなサービスを提供していくことを視野に、今後はマクニカをはじめ、さまざまな企業や自治体・大学とも連携していく方針だ。

デジタルツインで介護DXを進める「慈恵会」

青森市で4つの医療機関と24の介護事業を展開する慈恵会。自身も介護職の経験を持つ理事長の丹野智宙氏は、「介護職の働き方を改善したい」との強い思いを持ち、デジタル化を積極的に推進している。

慈恵会
理事長
丹野 智宙

取り組みの1つとしてマクニカと実施しているのが、ユニット型の介護老人保健施設「青照苑」の改革だ。大きな課題として、利用者の入浴とリスクマネジメントがあったという。

「入浴は、個室から利用者を移送する計画の作成に、介護リーダーが2時間も頭を悩ませている状態でした。そうした部分はテクノロジーに任せて、利用者の皆様に寄り添える時間を増やせるようにしたいと考えました」(丹野氏)

とはいえ、介護スタッフは利用者約100人の身体や精神の状態を把握し、ひいては性格や要望にも配慮する必要があり、容易にはこの課題を解決できない。利用者に快適な入浴を提供しつつ、スタッフの負担を減らすにはどうしたらいいか。そこでマクニカが提案したのが、製造業のデジタル化で使われるシーメンスのシミュレーションソフト「Plant Simulation」を活用した「デジタルツイン」だ。

慈恵会
ユニット型介護老人保健施設 青照苑
事務室長
小野 恒平

具体的には、工場をPC上で再現できる製品の機能を利用し、介護施設をPC上に再現。入浴のシミュレーションをして入浴計画の最適化を図っている。実現に当たり、設備やスタッフのシフト、利用者の属性や介護リーダーのノウハウをモデル化しなければならないため苦労を重ねたが、成果は大きかった。青照苑で事務室長を務める小野恒平氏は次のように説明する。

「介護現場はどうしても職人芸のように個々人の感覚に頼る部分がありますが、デジタル化したことで業務が定量的に可視化・共有され、効率化が進みました。PC上でシミュレーションができるため、浴槽の追加といった設備投資の判断が迅速にできるのも大きなメリットです」

利用者のリスクマネジメントでは、マクニカが自社開発した見守りシステム「AttentiveConnect」を導入。独自のアルゴリズムで離床を予測し転倒事故を防止するほか、心拍や呼吸、睡眠状態もセンサーで把握。聞き取りをしなくても各種のバイタルデータが記録される。とくに「睡眠の質」は、目視や聞き取りでは捉えきれなかった現実が見えてきたという。

睡眠状態を定量的に可視化することで、聞き取りではわからない生活リズムの把握につなげることができる

「夜間は1時間おきにスタッフが巡回しますが、『よく眠れている』と目視で判断しても、睡眠スコアが低い場合がありました。このシステムによって、日中の活動力や心身の状態をしっかり確認できます。今後も介護の質をさらに高めるため、マクニカさんとともに共創を積み重ねていきたいと思っています」(丹野氏)

高齢化や人口減少が進む日本にとって大きな社会課題であるモビリティと介護。いずれの分野も、担い手の効率化と生産性アップだけでなく、提供サービスの質を高めることも重要だ。先端テクノロジーを駆使してさまざまな現場の課題に取り組み、解決法を提示するマクニカが果たす役割はより大きくなっていきそうだ。

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