日本企業にも勝機あり?DX「第2回戦」の勝ち筋 マクニカが「目利き力」と「実装力」を重視する訳

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VUCAといわれる予測困難な時代の中で、企業に対するデジタル変革(DX)の要請が高まっている。日本は世界と比べて競争力が低いといわれDXの遅れも指摘されるが、早稲田大学大学院経営管理研究科教授の入山章栄氏は、今後のDXには日本にも勝機があると説く。その理由やそこで重要になる「デジタル実装」について、企業のDXを支援するマクニカ 代表取締役社長の原一将氏、イノベーション戦略事業本部本部長の佐藤篤志氏と入山氏が語り合った。

DX第2回戦は「目利き」が問われるIoTが主戦場

佐藤 このVUCA時代の中でテクノロジーはどんどん進化し、企業にはDXが求められています。入山先生は今の日本のこうした状況をどうご覧になっていますか。

早稲田大学大学院
経営管理研究科 教授
入山 章栄

入山 デジタル化の大波に日本は翻弄されましたが、「第1回戦」で負けただけの話で、これからスタートするDXの「第2回戦」では十分に勝機があると思っています。

というのは、第1回戦ではPCやスマートフォンというホワイトスペースを海外の巨大IT企業に取られただけであり、そこでビジネスとして生かせているのはデータビジネス全体の5%ほどという説もあります。では、なぜ95%もチャンスが残っているのか。それは、第2回戦はモノが主戦場となるIoTだからです。

IoTの時代は、モノがよくなければ話になりません。モノだけでなく人に広がっていけば、サービスの質も問われます。製造業や「おもてなし」といった日本の強みが生きてくるわけです。

また、すでに農業や酪農の世界では動植物もインターネットにつながっていることからもわかるように、第2回戦はデータのやり取りだけでなく、現場でいかに実装するかが問われます。日本企業は現場力が強いのにデジタルの実装が弱く、そこをつなぐマクニカの役割は非常に大きいのではないでしょうか。

佐藤 おっしゃるとおり、マクニカはアナログな分野へのテクノロジーの実装はこれまで相当数を手がけてきました。とくにセンサーは、半導体でアナログセンシングを扱ってきましたので、世界中のあらゆるものがそろいます。

マクニカ
代表取締役社長
原 一将

 センサーだけでなく、マクニカは世界中の先端テクノロジーに独自の価値を付加してきました。例えばヘルスケア領域では、あるベンチャー企業とともに、圧力をかけず24時間いつでも血圧が測れる非接触型の血圧計を開発中です。シリコンバレーだけでなくイスラエルや北欧、インドなど世界中のベンチャーと連携することで、テクノロジーの本質と将来性を見極める「目利き力」と技術企画力を養ってきた成果だと自負しています。

今後は、AIやセキュリティ、バイオサイエンスといった、指数関数的に発展している「エクスポネンシャルテクノロジー」の活用が求められるようになると考えており、これらの強みにさらに磨きをかけていきます。

適切な「実装力」が豊かな社会へ導く

入山 まさにその「目利き力」がマクニカの強みの源泉だと思いますし、私は非常に期待しています。というのは、それは一般の事業会社ではなかなか持てないケイパビリティーだからです。

そもそも1社で世界中のテクノロジーに目配りするのは大変ですし、自社の事業とどう組み合わせたら市場の要求に応えられるイノベーションが生み出せるかもわかりません。優れた技術や製品を見極め、適切に組み合わせて実装できることにはとても価値があると思います。マクニカに「何かないですか」と相談すれば、思いも寄らない有意義な提案が出てくる可能性もあるわけなので。

 そういったベネフィットをもたらすつなぎ役こそ、われわれの果たすべき役割だと考えています。当社ではコンサルティングも行っていますが、提案だけで終わることなく、実装まできっちり伴走します。現場に行かないと本当の課題やペインがわからないことも多いですし、実装を見据えて愚直に取り組まないと、真のインテリジェンスは獲得できないからです。

実際、現場でPoC(概念実証)に取り組んでいると、自然発生的にさまざまな人やアイデアが集まり、新たな試みが生まれるものです。例えば、自治体の自動運転バス実用化の実証実験を茨城県境町で行っていますが、隣町の小学生たちが夏休みの自由研究の対象にしたそうです。そうやって自治体の枠を超えたつながりが生まれると、単なるテクノロジーの活用ではなく豊かな社会の実現に貢献できるのではないかと思っています。

マクニカ
イノベーション戦略事業本部 本部長
佐藤 篤志

佐藤 逆説的に申し上げると、取り組みがうまくいく企業や自治体は、「組織全体で自分事として捉えている」という共通点があります。DX推進やエクスポネンシャルテクノロジーの実装というとツールに着目しがちですが、いくらCDO(最高デジタル責任者)が懸命に旗振り役になっても、周りがついてこないケースは少なくありません。

実は、そういった組織コンサルティングもマクニカでは行っています。イノベーターを選出したり、イエスマンのフォロワーばかりを集めたりするのではなく、あえてアンチや傍観者を巻き込むある種の「ドリームチーム方式」を採用することで、うまくハーモニーが奏でられることも多いんです。全体最適で関係組織からプロジェクトメンバーをアサインし、各組織が自分事となるよう意識させるという方法ですね。テクノロジーを実装しようとすると、おのずと組織間の軋轢が出てくるものですが、このドリームチームの中で理解が得られ、さらに経営トップ層のコミットがあるとDXが成功しやすいように思いますね。

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マクニカでは、DXプロジェクトの推進チームに「イノベーター」や「フォロワー」だけでなくあえて「アンチ」や「傍観者」も集め、それを「力・智・動のリーダー」が率いることにより、調和が生まれDXが成功しやすいと考えている

デジタルで競争すれば「日本企業も強い」

佐藤 最後にお聞きしたいのですが、入山先生はこのDXの第2回戦を日本企業が勝つためには、何が必要だとお考えですか。

入山 日本と米国の企業を比較したときにわかりやすいのが競争の度合いです。米国は競争が激しく、そして競争のルールを作るのもうまいんです。健全な競争の中で負けたらつらいですけど、それがあるからこそイノベーションが生まれます。

日本企業はバブル期以降、競争力が弱かったと思うのですが、それは競争をしないから弱いのであって、実は競争すれば強いと思っているんです。とくにデジタルの時代は世界の企業との競争が避けられませんから、デジタルをうまく活用しながら勝っていく会社が日本の地方の中小企業からも出てくると思います。マクニカさんには、そうした企業のデジタル実装を期待したいです。

 当社自身、海外のベンチャーとともにずっとビジネスをしてきたので、欧米式の競争というDNAは自然と持っています。そこに日本のおもてなしの精神も組み合わせながら新たなテクノロジーを取り入れ実装していくことで、DXの第2回戦を日本が勝てるようにご支援していきたいですね。

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