パーソル×PwC「メタバース市場参入」の本気度 眠る労働力を生かす、新人材サービスのあり方

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エンターテインメントの分野を中心に、盛り上がりを見せているメタバース。観光や医療、教育といった分野への広がりも見込まれる中、「メタバース上で働く」という新しい人材活用の方法が生まれようとしていることをご存じだろうか。こうした背景を受けて、販売・営業職の人材サービスを手がけるパーソルマーケティング(以下、PMK)とPwCコンサルティング(以下、PwC)が協働し、2022年1月「メタバースにアバターを派遣する」という事業を打ち出した。その狙いと将来像について、両社のキーパーソンが語り合った。

メタバースにおける“人材サービス”に勝機を見る理由

――近年、大手企業もメタバース関連のビジネスに参入しています。メタバースにおける人材サービスに可能性を見いだした理由を教えてください。

PMK 高倉敏之氏:理由は大きく3つです。まずは、社会情勢の変化。コロナ禍で伸びたECやSaaSなどの領域は、今後さらに成長していくでしょう。デジタル空間で過ごす人の増加に比例して、メタバースの需要も増加するとみています。

2つ目は「人材」の価値を見直す動きが高まっていることです。正しく人材に投資しようという潮流が、日本にも生まれているという実感があります。場所による制約をなくし、多様な働き方をアシストできるメタバースをビジネスフィールドの1つにすることは、十分に投資価値のあることです。

パーソルマーケティング株式会社 代表取締役社長 兼 営業本部長
高倉 敏之

3つ目は雇用の変化です。コロナ禍でリモートワークが急速に普及し、働き方や雇用の形が明らかに変わってきました。場所にとらわれない働き方を望む個人、よりよい労働環境を整備して自社の競争力につなげたい企業と、メタバースには高い親和性があります。

PwC 岩花修平氏:当社では5年前から、メタバース関連の事業を展開したいという企業に対して支援を行ってきました。以前は多くの場合、現場の業務改善にXR(AR/VR/MR)を役立てたいというご要望でしたが、1年ほど前からはメタバースをベースとした新規事業の検討が増えています。

もちろんメタバースはどんな企業にとっても新しい領域ですので、自社のビジネスにフィットするかどうかは検討の余地があります。確実に言えるのは、ビジネスシーンからの注目度が非常に高いということです。

PwCコンサルティング合同会社 ディレクター
岩花 修平

――今、メタバースがこれほど盛り上がっているのは、なぜなのでしょう。

高倉:5Gの登場・浸透による通信のスピードアップや、画像の精密化などが影響していると思います。すでに若年層を中心に、VRゴーグルを通して違和感なくバーチャル世界に没入できる体験の価値は浸透し始めています。そこにコミュニティーが生まれ、イベントが開催され、メタバースに広告が出るなどビジネスの新潮流が生まれている。すでにゲームだけでなく観光、小売りといった業界へと、影響が広がっています。

岩花:「別の自分になれる」「別の人生を生きることができる」といった点は、メタバースならではの魅力です。こうした体験に対する好奇心が、メタバースの盛り上がりを支えているように感じます。例えば、居住地の地理的制約で働く機会が限られている人や、対面でのコミュニケーションに自信がない人、高齢者や障害を抱えた人なども、肉体を切り離せるメタバースの世界でなら、より自分らしく活躍できるかもしれません。

高倉:例えば心理カウンセラーや弁護士など、顧客との対面を基本としている職種も、メタバースでアバターとして面談することができれば、お互いが顔を出す必要がなく、心理的なハードルが下がり、相談しやすいといったニーズもあるように思います。

日本に眠る労働力を掘り起こし、メタバースで生かす

――メタバースの人材サービスの普及は、社会にどのような価値をもたらすでしょうか?

高倉:日本は少子高齢化により2030年までに644万人の労働力が不足するといわれています(※)が、労働力として潜在的な可能性を秘めた人材は多数存在します。メタバースにおける人材サービスは、企業がこのことに目を向けるきっかけになると思います。居住地や身体的な制約のために雇用が難しい人材も、メタバースなら採用できるかもしれません。また、データ活用による人員管理を高度化できれば、働く時間という観点でも、選択肢が広がるでしょう。※出典:パーソル総合研究所「労働市場の未来推計 2030」

岩花:リアル世界の商取引をメタバースに移転する形で販売・接客・営業をする方法もあれば、オペレーションだけメタバースのアバターを導入するビジネスも考えられますね。

高倉:はい。さらにはメタバースとSNSをつないだプロモーション、ECと接続した物流スキームなど、新しいビジネスがいくつも考えられます。

岩花:AIの自動翻訳技術が今後さらに進展すれば、メタバース上で国境を超えた販売・接客ビジネスが生まれるかもしれません。

高倉:インターネットが世界に登場したときと同じように、メタバースはまだ、一部のアーリーアダプターにだけ広まっている状態でしょう。しかし、リアルとバーチャルがシームレスにつながっている今、メタバースが当たり前に使われる時代もすぐそこまで来ていると思います。われわれは人材領域のゲームチェンジャーとして、企業への支援を展開していきます。

「人材支援と先端技術」の総合知で新規事業を創出

――そうした事業の一環として、PMKが新設したのがメタバースデザイン事業部です。メタバース上の人材サービス​とは、具体的にどのような内容なのでしょうか?

高倉:「次世代テクノロジーを活用した営業支援・販売支援におけるリーディングカンパニーを目指す」という事業方針を柱にしています。具体的には小売業の接客・販売やアバター上で働くスタッフ育成支援、イベントの案内・運営支援などです。企業がメタバースに進出する際、人材の面から営業支援・販売支援・プロモーション支援をします。

実際に、VRを使用するイベントの様子

メタバースは新領域ですので、ユースケースを基にした出店や誘致の支援も実施したいと考えています。当社は、基本的にはリアル世界でのビジネス展開と変わらず、企業の「販売・営業」におけるベストパートナーの役割を担います。

――PwCは、同部署の事業推進にコンサルタントとして携わっているとのこと。どのような知見を基に支援されているのでしょうか。

岩花:当社は長らく、先端技術を活用した新規事業の推進を支援してきました。PMK メタバースデザイン事業部の立ち上げにおいては、事業創造、経営戦略策定、XRなどのデジタルテクノロジー、3Dコンテンツ制作、ゲーム領域などに精通した多様なメンバーでチームを組成し、体制を構築しました。

メタバースのビジネス活用には、テクノロジーの実装だけでなく、ビジネスを創出する力やルールメイクを念頭に置いたガバナンス、ガイドラインの整備などさまざまな準備が必要です。新しい領域へのチャレンジと捉え、テクノロジーに限らず、幅広い領域の専門家を集めて支援を展開しています。

――最後に、2社の提携において各社が発揮できる強みについて教えてください。

高倉:メタバースによって、今後さらに働き方・雇用の仕方の選択肢が広がっていくことは明らかで、ここに大きな社会的意義を感じています。ただ、メタバースのビジネス活用はまだまだこれから。いわば過渡期にあります。われわれは先駆的なプレーヤーとして、リアル世界で培ってきた人材サービスのノウハウを存分に生かしたソリューションを提供していきます。

岩花:高倉さんのおっしゃるとおり、メタバース起点のビジネスは、既存の社会課題を解決する一助になると思います。当社も、エマージングテクノロジー、AIやデータアナリティクスの力と、データセキュリティやガイドライン整備などの領域における知見を結集して、お役に立ちたいと考えています。

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