次世代の、ものづくりを磨く場所
ドイツ発インダストリー4.0の衝撃
NRWジャパン
デジタル技術で工場をスマート化
そのNRW州が今、連邦政府とも連携しながら推進しているのが、インダストリー4.0である。
ドイツ連邦政府は2005年に発表した「2020年のハイテクノロジー戦略」で、生産プロセスをデジタル化することの重要性を指摘した。そして2011年には、産官学が一体となってこの課題に取り組むべきだという声明が発表され、インダストリー4.0という言葉が使われるようになった。ドイツはインダストリー4.0の推進により技術的な革新を生み出し、製造業の生産性を飛躍的に向上させてドイツ産業の国際的な競争力をさらに高めることを目指している。
では、なぜインダストリー「4.0」なのか。そこにはこの技術革新が「第4次産業革命」に匹敵するという意味が込められている。
第1次産業革命では、蒸気機関の発明を契機に工場制機械工業が始まり、18世紀から19世紀にかけて人類の生産力は一気に拡大。本格的な近代の幕開けを招来した。これに次ぐ第2次産業革命は、電力利用による大量生産が始まった19世紀後半からの革新、第3次産業革命は20世紀後半に始まったIT化を指すのが一般的だ。いずれも生産力の飛躍的拡大と生産性の向上が大きなポイントになっていた。
インダストリー4.0も生産力の拡大と生産性の向上が目的であり、「もののインターネット(IoT)」や「サイバーフィジカルシステム(CPS)」などいくつかのキーテクノロジーやシステムで、工場をスマート化しようというものだ。これが実現すれば、マーケットでの売上状況に同期するような無駄のない生産体制が実現したり、あるいは、製造プロセスのコストや環境負荷を著しく減少させるものづくりが可能になったりするかもしれない。ものづくりの現場における人間の役割も大きく変化していくことだろう。
先端的な研究とマイスター精神
こうしたインダストリー4.0を注視しているNRW州経済振興公社は、9月26日、東京で「日独が描く未来工場・生産技術―革新ソリューションでその将来像を模索―ドイツ・NRW州のベスト・プラクティス」と題したセミナーを開催した。
当日は、インダストリー4.0に関連した最新の情報や日本企業が集積しているNRW州の動向などに関する話が聞けると関心を呼び、会場は盛況となった。
この中でNRW州経済振興公社アジア部長のアストリッド・ベッカー氏は、ドイツでは製造業が現在も発展を続けていること、インダストリー4.0はドイツの製造業の将来を確保するのが目的であることなどに触れたうえで、「NRW州はIoTの先進地域であり、優れた中小企業も多く、日本企業をはじめ海外からの投資も増えている」として、日本企業誘致に対する積極的な姿勢をアピールした。
また、ケルン・ボン地域協会マーケティング部長のカーステン・ヴァイス氏は、同地域が強い産業基盤を持ち、インフラも高いレベルで整備されていること、労働力も豊富で、進出した外国企業もパートナーを見つけやすいことなどを同地域の特徴として列挙。「インダストリー4.0はケルン・ボン地域にとっても重要なテーマであり、新しい生産技術にフォーカスした独自のネットワークもある」ことなどを強調した。
さらにアカデミックな領域からインダストリー4.0を推進するパーダーボーン大学ダイレクト製造研究センターのコマーシャル・ディレクターを務めるエリック・クレンプ博士は、3Dプリンタの基礎技術ともいえる積層造形技術について解説した。