次世代の、ものづくりを磨く場所
ドイツ発インダストリー4.0の衝撃 NRWジャパン

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欧州で新しい時代の幕が開こうとしている。起点は、産官学が連携して「インダストリー4.0」の実現を目指すドイツ。デジタル化によって工場をスマート化しようというインダストリー4.0が実現すれば、産業革命に匹敵する大変革が起きるとも期待されている。ドイツ随一の産業拠点であるノルトライン・ヴェストファーレン(NRW)州も、エリア内のさまざまなセクターがインダストリー4.0への挑戦を始めているようだ。

ドイツ最大の経済規模を誇るNRW州の
アドバンテージ

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欧州の中央に位置するドイツのNRW州。州都デュッセルドルフは日本企業が数多く集積。"リトルジャパン"とも言われているほどだ。日本人学校や日本人幼稚園もあり、在住日本人は約9000人にのぼる。このほか、ライン川沿いには、州内で最大級の都市ケルンや国連都市として知られるボンなどがある

EUの主要国であり、欧州経済の牽引車役を担うドイツ。そのドイツ16州の中でも経済規模が最大で、人口も最も多いのがNRW州だ。ドイツ全体の2割強を占めるGDP、約1800万人の人口は、もはや州というレベルを超えている。州都デュッセルドルフをはじめ、レバークーゼン、ドルトムント、ボン、ケルンなど日本でも認知度が高い都市を擁するNRW州は、オランダ、ベルギーの両国と国境を接し、欧州のほぼ中央に位置している。

NRW州がドイツ最大、欧州の中でも有数な経済規模を持つようになった要因の一つが、ロジスティクスのアドバンテージだ。州の西側には「父なる川」ライン川が流れ、ルール川との合流地点にあるデュイスブルクには、年間積載量1億2300万トン以上を誇る世界最大級の内陸港がある。このライン川とルール川、そして大小の運河により形成される水上交通網は全長約720kmに達し、流域の港は大小合わせて120を数える。

もちろんドイツ自慢のアウトバーンも、NRW州だけで日本の高速道路総延長の約4割に相当する2200kmが張り巡らされている。そのうえ州内には六つもの空港があり、世界中の約400都市に直行便が飛び立っている。鉄道も例外ではない。2011年1月には前述したデュイスブルクと中国・重慶とを結ぶ全長1万1000km以上の貨物鉄道路線も開通している。NRW州は欧州におけるロジスティクスの要衝とも言えるだろう。

欧州市場へのゲートウェイ

古くから石炭産業や鉄鋼産業を基盤として発展してきたNRW州は、地理的な優位性を生かしながら、新たな近代産業を育て、経済産業構造の革新に取り組んできた。

たとえばライン川流域のケルン・ボン地域だけを見ても、自動車・機械製造、化学、金融・保険、小売り・卸、IT・テレコミュニケーション、輸送、メディア、バイオテクノロジーなど多彩な産業が高度に集積。さらに、ケルン・ボン地域には27の大学のほかにも、数多くの研究機関が立地しており、欧州でもトップクラスの研究・科学インフラが形成されている。

こうした経済力の集積に導かれるように海外からの投資額でも、NRW州はドイツ最大のポジションにある。実に、対ドイツ外国直接投資の総額に占めるNRW州の割合は約4分の1。すでに1万4000社以上の外国企業がNRW州に立地しており、その中には日本企業も550社以上に及んでいる。数多くの日本企業は1950年代からNRW州をドイツ市場のハブと位置づけ、欧州市場へのゲートウェイと評価して、拠点を展開してきたのだ。この動きは現在も衰えることなく、むしろ加速しているようだ。

州内に複数の世界遺産があるNRW州は、観光地としても数多くの人々を引き付けている。古くからさまざまな産業が集積していた特長から、ツォルフェライン立坑をはじめ近代産業文化遺産も数多い。文化や芸術という視点からも、魅力的なエリアだと言えるだろう。
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