トップ主導型の戦略的オフィス投資が
ビジネスに変革をもたらす
一般社団法人日本オフィス家具協会(JOIFA)の調査では、経営者の約60%が「オフィス環境にかける支出は、費用ではなく投資」と考えているという結果が出た。さらに約30%は「将来のオフィス支出は増える」と回答。逆に減ると回答した経営者はわずか約16%にとどまった。
オフィス家具メーカー、岡村製作所社長の中村雅行氏は「日本と違って欧米では、ファシリティマネジメントという考え方が根付いている」と話す。ファシリティはオフィス環境などの設備・施設のこと。ファシリティマネジメントとは、日本でいうところの資産管財課の仕事にあたるが、その発想はまるで異なるという。日本では経費を極力抑えることに重きを置きコスト削減を課題とするが、欧米では仕事の効率性、働く人の快適性や健康にまで配慮しながら「投資」としてオフィス環境を整えているというのだ。
最近では、日本でも戦略的にオフィスに投資する経営者が増えてきている。「コストミニマムの発想と、人への投資としてオフィスをつくるのとでは大きな差が生まれます。企業は人の集団で、そこに企業文化も生まれます。オフィスは企業文化を表出する大事な場所であり、トップがうまく投資を行えば競争力の向上を図ることも可能です」と中村氏は説く。
働く人、働き方の
多様性に応える環境へ
デスクと電話があれば仕事はできる時代もあったが、ICTの進化とともに、現在では自分専用の席を持たず、オフィスの好きな場所、好きな席で仕事をするフリーアドレスも普及してきた。「仕事のやり方の変化とともに、時代に合わせてオフィス環境も変わっています。まさにオフィスは生き物なのです」。
中村氏は続ける。「モノが売れる時代は効率化を進めることで業績は伸びました。しかし、商品で差別化を図るのが難しく、競争も激しくなると、そう簡単にモノは売れなくなっていきます。効率化だけではなく、創造的にビジネスに取り組まなければ成長を望めなくなっているのです。そこで、みんなの力を合わせて創造性を高める、共創を促すオフィスに注目が集まっています」。
だがオカムラは、共創とともに、一人でじっくり考えて仕事に取り組むことの重要性にも着目する。企業にはさまざまなタイプの人がおり、一人で集中して仕事をした方が成果の出る人材も多い。また仕事の質としても、共創に適した仕事、個人で取り組むのに適した仕事などに分けられ、こうした多様性に応えるオフィスが求められていると考えるからである。
そこで、オカムラは昨年より"Quiet revolution(個を活かし、多様性に応えるオフィス環境へ)"というテーマを掲げ、今年はさらに一歩踏み込んだ"Focus & Collaboration(個人力とチーム力の最適バランス)"という新たなオフィスのあり方を提示。2月には、それを自ら体現しようと大阪駅直結の複合商業施設「グランフロント大阪」にオカムラの関西支社と、ショールームを統合し移転させたのだ。