マクドナルドと吉野家の「面」と「点」《それゆけ!カナモリさん》

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 新メニューによって、今後のメニュー戦略がどのようなものになるのかも予想できる。競合の松屋が豊富な定食メニューを展開しているのに対し、吉野家は定食メニューの開発が遅れ苦戦を余儀なくされた。しかし、吉野家は今後、定食メニューの開発よりも牛丼を頂点とした「牛肉系丼メニュー」で固めていくと思われる。

 10月7日には280円の「牛キムチクッパ」を投入する予定だという。割安な牛のバリエーションメニューですき家の280円牛丼に対抗。来店客にお試しクーポンなどで380円の牛丼を試す機会を確保し、自慢の肉質・味の違いを体感させて定着させる戦略だろう。380円はすき家のトッピングバリエーションの牛丼メニューとほぼ同価格だ。

  「牛肉系丼メニュー」への絞り込みは、そのメニューを好む客層への絞り込みも意味している。幅広いメニューの松屋、トッピングの楽しさのすき家は女性層・ファミリー層の集客なども狙ってきた。吉野家もテーブル席設置店舗の展開などで、同様のターゲットの取り込みを図ったが、支持されるメニューもなかったことから空振りに終わっていた。恐らく、今後はメインの男性顧客層に絞り込んだ展開を行うと考えられる。

 吉野家の今回の「腹の括り方」は、牛丼業界において、もはやリーダーは「すき家」を運営するゼンショーであり、自社はチャレンジャーのポジションであるという認識を自ら受入れたことにあるのだろう。

チャレンジャーの戦い方の基本は「差別化戦略」である。差別化のための基本は「選択と集中」だ。「選択」とは「やらないことを決めること」でもある。ダメな差別化戦略は、「やるべきこと」を選択したつもりで、「やるべきでないこと」まで選択していることが多い。また、「集中」とは「選択した中から、ピンポイントに絞ること」である。同じくダメな例は、「選択しても集中できていない」という差別化戦略である。

 吉野家は今回、メニュー開発やターゲット顧客の選定において、やらないことを決め、やるべきことをピンポイントに絞った「点」の戦略に切り替えたと思われる。あとはどれだけ、それをブレずに実行していけるかにかかっている。

外食冬の時代といわれる今日。「面」で成功しているマクドナルドも、「点」に切り替えた吉野家も、「徹底すること」が生き残りに欠かせない。それは外食産業だけの話ではないのは明らかだ。

※今回はおまけとして筆者の「牛鍋丼」試食レポートつきです。「牛丼マーケター」の異名も合わせ持つカナモリさんの試食体験やいかに……

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