机上のフレームワークではなく
実践的フットワークを

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フレームワークより
実践的フットワークを

防災システム研究所所長
山村 武彦
「現場主義」(真実と教訓は現場にあり)を掲げ、災害現場の現地調査を行う。日本における実践的防災・危機管理の第一人者。『防災・危機管理の再点検-進化するBCP(事業継続計画)』(金融財政事情研究会)他、著書多数

BCPや災害マニュアルは、いざという時に役立つものにするべきです。咄嗟の判断をしなければならない時に何十ページもある分厚いマニュアルを読んでいる余裕などないからです。ただ現実的には、目標や理念といった机上のフレームワークを作ることに重きを置いて、肝心の中身は乏しいものが少なくありません。

いい例があります。

全国に拠点を持つあるエレベーターの関連企業は、災害があった場合、現場に権限が与えられるということを決めていました。東日本大震災時、東北の拠点と連絡が取れない状態になっても、各営業部隊が自分たちで考えて動くことによって、被災地の営業部隊の応援に回るなどして活躍したそうです。大事なのは、机上のフレームワークではなく、より実践的なフットワークなのです。

最終的に、命は自分で守るしかありません。非常時の連絡手段の確認ひとつ取っても、ないがしろにできません。自分と家族の命を守る意識、知識、訓練、これをそれぞれが徹底してください。このメッセージは個人に対してだけではなくて、BCP対策を考える企業に対するものでもあります。危機に対する意識啓発にコストとエネルギーを使う企業の社員は、いざという時に一人ひとり自主的に動けるようになりますから。

日本は山間地が約70%で、海に囲まれています。豊かな自然に囲まれていますが、地政学的リスクは想像以上に高いです。コンクリートから人へ、ということを言った政党もありましたが、必要なハードを必要な場所に設置することは防災対策の基本です。ただ、ハードだけでは対応しきれません。ハードを生かしながら、一人ひとりが防災の意識を持ち、実践的な対策を講じ、いざという時にそれができるように段取りをしっかりと決めておくこと。それが、災害から命を守るための、ただひとつの方法だと言えます。