ICTで産業に活力を 国内最大級ソフトウェア企業の挑戦

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NEC 養殖管理ポータル
水産養殖の飼育業務に関する日々の記録や報告、水質や養殖物の常時モニタリング、収集したデータの分析が可能なクラウドサービス。2014年内に提供開始予定

中でも特に、第一次産業支援ソリューションに力を入れていくという。たとえば東京海洋大学と共同で開発したクラウド型サービスシステム「NEC養殖管理ポータル」は、水産物の養殖における飼育業務の記録や報告から、水質、温度、養殖物の常時モニタリングまで行い、さらに収集したそれらのデータ分析とその後の活用までを包括的に支援するユニークなクラウドサービスだ。養殖環境の可視化やノウハウ蓄積など多くの成果が期待できるこの事業は、現在実証実験の段階にあり、新木場駅前にある同社のオフィスの中では、仕事に没頭するビジネスパーソンがいるすぐ横の部屋でアワビの養殖が行われている。

「私たちが持っている技術やソリューションを横展開するためには、まず旧7社にどういうアセットがあるのか洗い出す必要があります。昨年からその作業を始めたのですが、いろいろ面白いプロジェクトが発見できています。アワビの養殖をしているなんて、私も知りませんでしたよ」

そう言って、毛利社長は微笑む。

事業化までを視野に
産官学連携で研究推進

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ITによる農作物栽培支援
おいしいミカンの栽培支援システムを産官学連携で開発。これまで「勘と経験」に頼りがちだったノウハウの数値化に成功した

また、同社が注力する第一次産業分野としては、三重県などでのICTを活用したミカン栽培も挙げられる。これは農研機構、三重県、愛媛県などと共同で進めているプロジェクトで、生育途中の果実の品質や、気象データなどから栽培状況を可視化・情報共有し、おいしいミカンを栽培する技術を開発。土壌成分や果実品質測定のための共同研究も、東京農工大学、理化学研究所らとともに行われ、タイや愛媛県での実験も実施した。ミカンに限らず、様々な作物への適用も視野に入れている。

林業の分野でもICT活用による森林資源の管理を目指す取り組みが進められている。たとえば航空写真の三次元解析による資源量の推定と、GIS(地理情報システム)による森林資源管理は、人手による測定では困難だった広域にわたる森林の金額価値の可視化により、林業を支援することができる。森林資源量の推定技術は実用化のレベルに到達した。

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ITによる森林資源の管理
航空写真のステレオ処理と画像解析によって森林と地面の高さを算出し、樹高を推定する技術を確立した

「日本の農水産物は高品質で安全だということが海外でもよく知られるようになってきています。けれども農業も林業も水産業も、担い手不足という問題に直面しています。そこをICTで支援し効率を高めれば、担い手不足の問題を解決できますし、データの解析などでより付加価値の高い作物を、より多く生産できるようになります。そうなればその作物を輸出する道も開けてきて、地域の活性化や地域ビジネスの創出にもつながりますし、新たな若い担い手が参入しやすくなる、ということも期待できます。私たちはそこまで視野に入れて、第一次産業の支援に取り組んでいます」

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