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ICTで産業に活力を

  • 制作:東洋経済企画広告制作チーム
従業員1万2000名、売上高2600億円のソフトウェア企業が、今年の4月に誕生した。
NECグループの主要ソフトウェア企業7社が統合して発足したNECソリューションイノベータだ。今年度は変革へ向けた“助走”期間と位置づけて走り始めたばかりだが、すでにそのスピードは加速し始めている。
新木場駅前に構える二棟の社屋。全国1万2000人の社員を束ねる本社であり、このビル内でアワビの養殖実験も行っている

ソリューションを共有し
人材と資産を有効活用へ

昨年、NECソリューションイノベータ設立のニュースが伝わると、ソフトウェア業界に衝撃が走った。競合他社の多くを驚かせたのは、その規模の大きさだけではない。各地域に根を下ろしながら、OSからアプリケーション、組み込み型ソフトウェア、さらにシステム開発、ITコンサルティングに至るまで多様なITサービス事業を展開してきた7社が統合されるとなると、技術力やインテグレーション力などで、とてつもないパワーを持つソフトウェア企業が登場することになるからだ。

今回統合したのは、NECソフト、NECシステムテクノロジー、中部日本電気ソフトウェア、九州日本電気ソフトウェア、NECソフトウェア東北、北陸日本電気ソフトウェア、北海道日本電気ソフトウェアという7社。それぞれがNECグループのソフトウェア事業を担ってきた、まさに主力部隊である。

なぜ7社は統合したのか。その意図について新会社を率いる毛利隆重社長は次のように語る。

NECソリューションイノベータ
代表取締役社長
毛利隆重

「NECグループの方向性は社会価値を創造する社会ソリューション事業にシフトしています。当社はその社会ソリューション事業を支える中核ITソフトウェア企業という位置づけです。

いま、日本が抱える問題の多くは地域社会にこそあります。全国各地にある拠点がマーケットセンサーとなってニーズを集め、一緒にソリューションを開発できれば、同じ問題を抱える別の地域にも展開できます。場合によっては海を越え、海外でもそのソリューションが役立つかもしれません。しかし7社が個別に動いていたのでは、そういう横展開はしにくい。人材を含む資産の有効活用という面でも、7社が強く連携したほうがいい。そういう積極的な意味合いで統合に踏み切ったのです」

アワビもミカンもICTが育てる
第一次産業を積極支援

同社は、NECの社会ソリューション事業の中核会社として、サイバーセキュリティや衛星システム、企業におけるビッグデータ活用など、様々なプロジェクトにおいてNECと分担し、先端技術を駆使したシステム開発を担っていく。今後はさらに、同社が事業化を主導する独自事業を積極的に推進するつもりだ。

性別・年齢自動推定システムFieldAnalyst
設置したカメラの映像から人物を自動的に抽出し、性別/年齢層を推定するシステム。客層分析ツールとして、企業のマーケティングを支援する
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NEC 養殖管理ポータル
水産養殖の飼育業務に関する日々の記録や報告、水質や養殖物の常時モニタリング、収集したデータの分析が可能なクラウドサービス。2014年内に提供開始予定

中でも特に、第一次産業支援ソリューションに力を入れていくという。たとえば東京海洋大学と共同で開発したクラウド型サービスシステム「NEC養殖管理ポータル」は、水産物の養殖における飼育業務の記録や報告から、水質、温度、養殖物の常時モニタリングまで行い、さらに収集したそれらのデータ分析とその後の活用までを包括的に支援するユニークなクラウドサービスだ。養殖環境の可視化やノウハウ蓄積など多くの成果が期待できるこの事業は、現在実証実験の段階にあり、新木場駅前にある同社のオフィスの中では、仕事に没頭するビジネスパーソンがいるすぐ横の部屋でアワビの養殖が行われている。

「私たちが持っている技術やソリューションを横展開するためには、まず旧7社にどういうアセットがあるのか洗い出す必要があります。昨年からその作業を始めたのですが、いろいろ面白いプロジェクトが発見できています。アワビの養殖をしているなんて、私も知りませんでしたよ」

そう言って、毛利社長は微笑む。

事業化までを視野に
産官学連携で研究推進

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ITによる農作物栽培支援
おいしいミカンの栽培支援システムを産官学連携で開発。これまで「勘と経験」に頼りがちだったノウハウの数値化に成功した

また、同社が注力する第一次産業分野としては、三重県などでのICTを活用したミカン栽培も挙げられる。これは農研機構、三重県、愛媛県などと共同で進めているプロジェクトで、生育途中の果実の品質や、気象データなどから栽培状況を可視化・情報共有し、おいしいミカンを栽培する技術を開発。土壌成分や果実品質測定のための共同研究も、東京農工大学、理化学研究所らとともに行われ、タイや愛媛県での実験も実施した。ミカンに限らず、様々な作物への適用も視野に入れている。

林業の分野でもICT活用による森林資源の管理を目指す取り組みが進められている。たとえば航空写真の三次元解析による資源量の推定と、GIS(地理情報システム)による森林資源管理は、人手による測定では困難だった広域にわたる森林の金額価値の可視化により、林業を支援することができる。森林資源量の推定技術は実用化のレベルに到達した。

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ITによる森林資源の管理
航空写真のステレオ処理と画像解析によって森林と地面の高さを算出し、樹高を推定する技術を確立した

「日本の農水産物は高品質で安全だということが海外でもよく知られるようになってきています。けれども農業も林業も水産業も、担い手不足という問題に直面しています。そこをICTで支援し効率を高めれば、担い手不足の問題を解決できますし、データの解析などでより付加価値の高い作物を、より多く生産できるようになります。そうなればその作物を輸出する道も開けてきて、地域の活性化や地域ビジネスの創出にもつながりますし、新たな若い担い手が参入しやすくなる、ということも期待できます。私たちはそこまで視野に入れて、第一次産業の支援に取り組んでいます」

健康・予防医療、少子高齢化をはじめとする国内の諸問題にもICTを武器に立ち向かおうとしている。加速度センサーにより居室のドアや冷蔵庫の開け閉めを感知し、独居高齢者を見守るサービスが実用化されている他、メンタルヘルスの不調の予防、早期発見・早期対処に向けて、セルフケアと職場改善の両面からアプローチして好評を得ている。今後は、蓄積したセルフチェックデータを分析し、メンタル不調者の予兆発見にまで取り組む予定だ。地方を活性化させる観光分野でも、リピーターを増やす施策にとりかかったところだ。

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メンタルヘルスチェックツール for SaaS
厚生労働省研究班の作成した職業性ストレス簡易調査票(BJSQ)をベースとした、SaaS型職業性ストレス調査システム。従業員のからだとこころの健康を管理する。トライアル版を無償提供している

統合で不可能が可能に
変革し続けることが重要

どこにどういう技術を持つSEがいるのか。誰が何を得意としているのか。そうしたことを点検し、最適な人員を最適なプロジェクトや部門に配置するとともに、ある地域で展開していたソリューションを、別の地域の顧客にも紹介するといった動きが徐々に顕在化してきている。毛利社長はそれを「ジグソーパズルのピースがピタッとはまるようなイメージ」だと表現する。これはまさに統合によるシナジーであろう。

「OS、ミドルウェアから、ネットワーク、さらにセンサーやビッグデータまで、1社で、これほど多様で幅広いアセットを持つソフト企業は、他にあるでしょうか。7社の経験と知見を集め、融合すれば、これまでできなかったようなプロジェクトも可能になってきます」

そう語る毛利社長は、さらに「アライアンス構築力」「技術の融合力」「規模とスピードを兼ね備えた現場力」という3つの強みを構築していくとしている。今年度はそのための準備期間という位置づけで、組織や仕組みを変革、再構築していくが、それと同時に、社員一人ひとりが自らを変革していかなければならない、と毛利社長は強調する。

「今後のソフトウェアの仕事においては、課題解決能力だけでなく、問題発見能力がより重要になってきます。顕在化していない問題を見つけること、その力を養うためには、自分自身で常に考え続けることが必要です。変わらなければと強く思い、視線を上げる、下げる、幅を広げる。そういうことをし続けると、今までと同じものを見ていても、見え方が変わってきます。まず自分たちが変わらなければ、現代の激しく変化していく社会のニーズに応えられるはずがありません。私自身、自らを変革する強い意志で、この会社をリードしていく覚悟です」

7つのピースが集まってピタリとはまったとき、新しい会社が形作られた。しかし、その形は社会のニーズの変化とともに、これからも常に変わり続けていく。