ブランド品リユース事業で世界一を目指す大黒屋 質屋業をルーツとする強みで新事業開始・拡大
質屋業をルーツとする大黒屋ならではの強み「高く買って安く売る」
わが国の経済は今、新型コロナウイルス感染症の拡大に伴い大きな影響を受けている。業績悪化により、事業を休廃業したり倒産したりする企業も目立つ。
それに対して、大黒屋ホールディングス 代表取締役社長の小川浩平氏は傘下の大黒屋において「当社も、インバウンド需要の低迷や、緊急事態宣言の発出などによる外出自粛、休業要請などによって経済活動が制限されたのは事実です。足元では減収、減益となりました。しかし、当社は質屋業も展開しています。コロナ禍においてお客様の質屋業に対する需要は高く、事業全体として売上高や利益への影響を抑えることができました」と語る。同業大手では参入が難しい質屋業という庶民金融を提供していることにより、コロナ禍にあっても安定的な収益を確保できているのだ。
大黒屋ホールディングスの中核企業である大黒屋は、バッグ、時計、宝飾品などのブランド中古品の買い取り販売業および質屋業を展開する。現在、関東から九州までのエリアに24店舗を展開している。古物売買店・質店を全国規模で展開している例は少ない。
大黒屋の創業は1947年で、70有余年の歴史を誇る老舗だ。ただし、最近では、リサイクルショップ、ネットオークション、フリマアプリなどを活用した新興企業が成長し、台頭してきている。
「多くの企業がリユース市場に参入し活性化しているのは喜ばしいことです。しかし、他社のブランド品事業の場合、売り手側はできるだけ高く売りたい、買い手側はできるだけ安く買いたいと、利益相反になるため、価格が不透明になりがちです。それに対して当社は、高く買って安く売ることで商品在庫の回転率を高めることにより粗利を高めることを目指しています。例えばブランド品のバッグであれば、在庫回転日数30日を維持しています。質屋業をルーツにしているからこそ、商材の価値を見極め、適正な値付けをするノウハウとスキルがあります。その結果、高く買って安く売ることが可能になるのです」
全国に多くの実店舗を有していることで、強い販売力を維持しているのも大きな特長だ。質流れ品も含め、仕入れでも顧客に利便性を提供できる。これらを背景に、同社では年間20万件以上の新規・既存の買い取り顧客および質顧客の取引があるが、ブランド品を多く所有している富裕層顧客のリピーターも多いという。
国内では高齢化が進むが、小川氏は「人生100年時代ともいわれるようになっています。長生きできることはうれしいことですが、生活のための資金も必要です。お子さんなどのご家族にも、相続や介護などへの備えのためにも、ブランド品を換金するといったニーズが出てくるでしょう。そのようなときに、大黒屋であればお持ちの動産を高く買い取れる可能性があります。そういった点で、国内でも、当社のビジネス拡大の余地はまだあると考えています。また、そのために、新たに買い取り専門店も積極的に出店する計画です」。
「5カ年事業計画」では、大黒屋を中心に2022年に3店舗、以後年間10店ペースで出店するとしている。26年3月には全国約70店舗のネットワークに広がることになる。大黒屋グループにとって、大きな成長ドライバーになることは間違いない。