アドバンスクリエイトの高収益の秘密に迫る 躍進する保険業界のイノベーター

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国内最大級の保険選びサイト「保険市場」を擁し、自社開発のシステムを活用したデータベースマーケティングなど、常識を覆す革新的なビジネス手法で保険業界の「イノベーター」と呼ばれてきたアドバンスクリエイト(東証一部上場 証券コード:8798)。2021年9月期の業績予想で過去最高の売上高・経常利益を見込む同社は、12期連続でROE10%を大きく超え、長期にわたって高収益経営を続けている。つねに新しいことに挑戦しながら、高収益を上げられるのはなぜなのか。その秘密に迫った。

ROE20.9%。過去最高益を更新へ

国内最大級の保険選びサイト「保険市場」を運営するアドバンスクリエイトは今、保険業界にあって目を見張る快進撃を見せている。同社は2021年6月2日、今期2回目となる業績予想の上方修正を公表。同年9月期通期の売上高は122億円、経常利益は19億円といずれも前期を大幅に上回り、過去最高を見込んでいるとした。ROE(自己資本利益率)も過去最高の20.9%に達し、12期連続で10%を超える見込みだ。長期にわたって同社がこれほど高収益を維持している理由は何なのか。その答えの1つは、事業ポートフォリオにある。

1995年に創業した同社は97年から主流の訪問型販売ではなく、ポスティングによる通信販売を推進し、データベースマーケティングによる顧客視点のビジネスを展開するなど、つねに業界の常識を覆してきた。99年にWebサイト「保険市場」を開設し、早くからインターネット通販に着手。04年からは店舗での対面営業も開始し、Webマーケティングから高品質なサービスの提供まで、一気通貫の「OMO(Online Merges with Offline)」を推し進めてきた。16年に専業保険代理店として唯一(※)東証一部上場を実現するなど、その歩みはまさに業界に新風を吹き込む革新の連続だった。

※『会社四季報』参照

その中で築いてきたのが、多様な事業ポートフォリオである。Webサイト「保険市場」を入り口に、対面、通販、ネット申し込み、協業保険代理店での申し込みと、顧客のニーズに応じた多様な販売チャネルに加え、収益を生むポートフォリオも多様に有する。保険代理店事業のほかに、媒介した保険のリスクを一部引き受ける再保険事業、Webサイトなどを活用した広告・広告代理事業、自社開発したシステムを販売するASP(アプリケーション・サービス・プロバイダー)事業と、業界でこれほど多彩に事業を手がける企業は珍しい。中核事業に加えて安定収入を見込める複数の事業を多角的に展開することで、保険に関するあらゆる収益機会にアプローチし、高収益を生み出しているのだ。

高収益を生み出す販売・開発の「現場力」

このポートフォリオ戦略と並んで同社には高収益の源泉がもう1つある。それが、収益を生み出す「現場」の力だ。同社の当期経常利益予想を従業員1人当たりに換算すると、540万円以上、上場企業の中央値の実に3倍以上になる。一人ひとりが高い生産性を発揮する「現場力」こそが、同社をフロントランナーたらしめているというわけだ。

中でも最大の収益源である保険販売において、「現場力」を高める同社の強みが、ITである。とりわけ21年9月期の業績予想向上の大きな要因が、自社開発のビデオ通話システム「Dynamic OMO」を活用したオンライン面談だった。

アドバンスクリエイト
大阪支店
八田知尋
アドバンスクリエイト
大阪支店 主任
山下紗穂

20年3月に早くもオンライン面談を開始した同社は、数万件というオンライン面談を行ってきた知見を結集し、保険相談特化型のビデオ通話システム「Dynamic OMO」を開発した。20年10月から本格的に運用を開始した同システムは、B to Cの保険相談に特化した仕様で、徹底して顧客の利便性が追求されている。「お客様に画面を介する負担を感じさせることなく、わかりやすく説明することができます」とそのメリットを語るのは、大阪支店の八田知尋氏だ。八田氏はオンライン面談専門の営業担当になって以降、実面談を行っていた時期の営業成績を上回り続けている。また「時間も場所も選ばないこともオンライン面談のよいところです。大阪支店に居ながら北海道から沖縄まで、それまで訪問できなかった全国のお客様に対応できるようになりました」と、大阪支店主任の山下紗穂氏は続ける。加えて保険証券管理アプリ「folder」などほかの自社システムと連携させることによって、サービスの質をさらに向上させている。

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