「アドバンスクリエイト」新時代のOMO戦略 インシュアテックのフロントランナーが挑む
時代のニーズを先取りしコロナ前にオンライン保険相談を始動
「2030年、保険販売の現場では、対面とオンラインによる非対面の垣根は完全になくなっているでしょう。テクノロジーは5Gのさらに次、6G時代になり、スマホに代わる新しいデバイスも登場している。例えばお客様とのインターフェースはホログラムとなり、お客様にとって最適な時、場所で保険相談ができるようになっているかもしれません。私たちはそうした新しいテクノロジーを活用したシステムを開発し、次代のOMOを推進しているはずです」。そんな驚くべき未来予想図を語るのは、アドバンスクリエイトの専務取締役の櫛引 健氏。「これは、当社社長の濱田が思い描く未来です。当社では、濱田の頭の中にある未来図を映像化し、社員が長期的な視点に立って仕事に取り組めるようにしています」。国内最大級の保険選びサイト「保険市場」を運営する同社は、代表取締役社長の濱田 佳治氏の戦略に基づき、これまでも既存の保険ビジネスの常識を覆す先進的なビジネスモデルを次々と打ち出し、保険業界に革新をもたらしてきた。
店舗や商品・サービス、広告など顧客とのあらゆる接点がインターネットでつながる時代にあって、この数年、オンラインとオフラインを融合させる「OMO(Online Merges with Offline)」への関心が急速に高まる中、同社は現在、驚異的なスピードでOMO戦略を推進している。その牽引役を担っているのが、同社が独自に開発したビデオ通話システム「Dynamic OMO」だ。
目を見張るのが、保険相談に特化したさまざまな機能だ。スマホの小さい画面でも保険資料を見やすく表示したり、複数の資料を同時に立ち上げる機能、お客様がズームアップしている箇所を可視化する機能など、ほかにはない数々の機能には、オンライン面談の体験者の声が生かされている。
その誕生の裏にも、社長である濱田氏の先見の明があったという。「5G時代の到来をにらみ、濱田の指示でオンライン面談を開始した矢先に見舞われたのが、コロナ禍でした」と、櫛引氏は振り返る。同社は20年初頭からオンライン面談に向けての準備をスタートし、同年3月から市販のビデオ通話システムを使ってオンライン面談を開始。同年4月の緊急事態宣言によって期せずしてオンライン面談のニーズが急増したこともあり、3万件超にも及ぶ面談経験を積み、その知見を反映してわずか半年で自社開発のビデオ通話システムを完成させた。
「Dynamic OMO」は20年10月から自社内での運用を開始し、目覚ましい成果を上げている。オンライン面談の最大の利点は、時間と場所の制約を越えられることにある。「どこにお住まいでも、またお時間の空いたときにいつでも相談していただけるため、お客様の利便性が格段に向上しました。横浜にお住まいのお客様に名古屋支店の社員がオンライン面談し、面談後に横浜支店の社員が書類をお渡しに伺うといった連携も日常的に行われています」とオフラインマーケティング推進部 部長代行の山口 彩氏は言う。加えて、同じく自社開発した保険証券管理アプリ「folder」を利用することにより、オンライン面談におけるサービスクオリティーの向上を実現している。スマホのカメラで保険証券を撮影すれば、すぐに画面共有できる機能により「手持ちの証券を見ながら詳しく診断してもらえた」と喜ぶ顧客も多いという。
相談数の増加によって、契約数も急増している。しかしITだけがこの成果をもたらしたと考えるのは早計だ。「オンラインでの面談後、お客様が改めて支店にお越しになったり、こちらが訪問するなどオフラインの対応につながることも少なくありません。いずれにしても基本姿勢は同じ。ビデオ通話の後、手書きでお礼状を出すなど、温かみを感じていただける対応を心がけています」と山口氏。オンラインとオフラインの垣根を越えたサービスこそ、同社のOMOの真骨頂だ。