出遅れた日本企業に「処方箋」はあるのか? AI・ディープラーニングはビジネスの必須科目
――AIの時代になって、経営者はどのようなことを意識すべきでしょうか。
井﨑 「日本はものづくりに強みがある」と言いますが、巨大IT企業はもう、ものづくりの領域をやり始めていて、市場をすべて持っていかれる可能性があります。すでに危険な状況にあることをまず認識したうえで、どうやって企業の競争力を高めていくのかを考えていただきたいですね。
松尾 もはや取り返しがつかない差が開いているんじゃないですか。日本はコロナ禍でデジタル化が少し進みました。しかし、世界はコロナ禍を機に、もっと先に進んでいます。ビデオ会議が増えたので先日ワイヤレスのイヤホンを買ったのですが、もともと優位性があったはずの日本メーカーの存在感はなくなっていて、逆に中国系ばかりが目立ちました。
川上 日本に優位性は残っていない、すでに焼け野原だというくらいの強烈な危機感が必要でしょうね。そう認識しておかないと、おそらく今後も変われない。何か処方箋はありますか?
井﨑 AIやディープラーニングの使い方によっては、特定の分野で1つの企業が他を淘汰してくような業界再編は十分にありうると思います。日本の個々の企業に期待です。
松尾 日本のスタートアップには、世界で勝てる可能性がまだあると思います。大企業は、とにかく若い人を解き放って活躍させてあげること。それが日本の唯一の勝ち筋ではないでしょうか。
コロナ禍においてビジネス成長が鈍化している日本企業に対し、世界のIT企業はさらに業績を伸ばしている。ボーダレスが叫ばれる中、日本企業に残された時間はそれほど多くないのかもしれない。
井﨑氏が所属するNVIDIAでは単なるハードウェアだけでなく、対話型AI、レコメンデーションAI、医療画像診断支援AI、インテリジェントビデオ解析AI、自動運転AIなど数多くのソリューションや、迅速な開発着手を可能とするNGCカタログというGPU最適化ソフトウェアのハブを無償で提供しており、AI、ディープラーニングに取り組む環境をそろえている。NVIDIAの日本法人では、日本企業がこれらの環境を活用し、自社のビジネスにAIを導入する支援をしている。現状に危機感を覚えながらも、どこから手をつければいいかわからないという企業は、まずはこうしたサービスを取り入れることから始めてはいかがだろうか。