地熱のまち"ゆざわ"の熱き挑戦 地域の宝を産業振興に生かす
旅を通し地熱のまちの魅力をアピール
市民の手で観光促進策を企画立案
人のつながりを生み出す湯沢ならではの旅を企画
湯沢市の地熱資源は観光業にも活用されており、その魅力を多彩なツアーを企画して伝えているのが、「旅のわツアー」の齋藤あゆみさんだ。
秋田県にかほ市出身の齋藤さんは、高校卒業後に県外に出た後、海外経験も含めてさまざまな価値観の異なる人と出会うことで、自らも成長することを実感したという。「そうした人と人の出会いによって新しい価値を生むことを、地域でできたら地元の活性化につながると感じ、自分の経験からそれができるのは旅行だと考えました」と振り返る。
「そうしたチャレンジをするなら、やはり地元の秋田で」と考えたとき、「地域おこし協力隊」を募集していたのが湯沢市だった。協力隊の一員となった齋藤さんが最初に担当したのは、「ゆざわジオパーク」を活用したイベントやツアーの企画運営。ここで湯沢市の多くの魅力を知り、人とのつながりも増やしていった齋藤さんは、20年2月に「旅のわツアー」を設立し、旅行業を通した地域の活性化に取り組んでいる。
「旅のわ」のネーミングには、「人と人が旅を通してつながり『輪』が広がること、そして互いを理解し合って仲良くなり『和』ができること。そんな願いを込めています」という齋藤さん。ツアー企画で最も意識しているのは、旅のストーリー化とターゲットの絞り込みだと話す。
例えば、好評を得た「地獄の紅葉と極楽の美食ツアー」という企画は、単に紅葉や名所を見せるのではなく、案内人となったジオガイドが地獄のストーリーを語りながら人気スポットを巡り、参加者を楽しませると同時に湯沢市の魅力をアピールするもの。このツアーは反響が大きくすぐに定員に達したという。コロナ禍に対応したオンラインの冒険イベントも実施しており、県外からの参加者も多く、湯沢市を広く知ってもらう機会となっている。
産業振興や活性化に向け市民が企画委員会を運営
また、湯沢市では20年度から2カ年にわたり、地熱モデル地区プロジェクトとして、JOGMEC協力のもと、地熱資源を活用した観光促進事業計画の策定・実証を推進している。齋藤さんもプロジェクトメンバーの1人となっており、事業の1つである旅行商品を実行するランドオペレーターの役割を担っている。
このプロジェクトは、湯沢市の産業振興や活性化に意欲的な市民により企画委員会を立ち上げ、首都圏のコンサルティング会社も加わってもらい定期的に委員会を開催。地熱コンセプトブックを作成するとともに、既存のツアーとは一線を画しながら、地熱資源を前面に出して楽しんでもらえるツアーの企画や、お土産などとして湯沢市のPRに貢献できる商品の企画立案を進めている。昨年12月には、地熱資源を活用した地域の先進事例として、委員会のメンバーがほかの地熱利活用の盛んな地域の取り組みの視察を行い、貴重な知見を得ることができた。
このように、地域の宝である地熱資源を生かし、農業や食品加工、観光業など多様な分野で取り組みを展開する湯沢市。大地のエネルギーを地域振興に生かす「地熱のまち“ゆざわ”」のチャレンジは、地元を大いに盛り上げるとともに、ほかの地域からも注目を集めている。