「選ばれる」茨城県圏央道沿線の魅力の源泉 雪印メグミルクもキユーピーも茨城県に立地

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首都圏中央連絡自動車道(圏央道)は、2017年2月、茨城県区間の境古河IC-つくば中央IC間が開通し、湘南から成田までの地域が結ばれた。これにより、茨城県内の圏央道沿線では企業立地が増加。19年には、茨城県は工場立地面積および県外企業立地件数で全国1位となった。なぜ選ばれるのか、その魅力を探った。

※経済産業省「令和元年(2019年)工場立地動向調査結果(速報)」より

圏央道は県内全線開通
4車線化工事も進む

多くの企業が立地先として茨城県を選んでいる。経済産業省が実施した「令和元年(2019年)工場立地動向調査結果(速報)」で、茨城県は工場立地面積(150ha)および県外企業立地件数(40件)で全国1位となった。工場立地件数も65件と全国3位だ。注目すべきは、工場立地件数65件のうち、圏央道沿線をはじめとする県南・県西地域への立地が47件(72%)を占めていること。同地域に立地している企業には、自動車関連企業では日野自動車(古河市)、自動運転の研究・開発を行っているヴァレオジャパン(つくば市)、スウェーデンに本社を置く自動車用安全部品の製造を行うオートリブ(つくば市)、食料品関係企業で雪印メグミルク(阿見町)やキユーピー(五霞町)、そのほか、住宅建材等を扱う積水化学工業や、医薬品製造を行う日本ジェネリックなど、大手企業が数多く立地している。

注1)調査対象は製造業にガス業、熱供給業、電気業(太陽光・水力・地熱を除く)を加えたものです
注2)面積の表記はha単位ですが、計算はm2単位で行っているため、増減率が一致しない場合があります

なぜ、圏央道沿線が選ばれるのか。まずは恵まれた立地だろう。都心まで40~60kmと日本最大の市場に近いことは、物流企業や消費者向けの企業にとって大きなメリットだ。むろん、都心の取引企業にもアクセスしやすい。つくばエクスプレス(TX)なら、秋葉原まで45分、JRの特急を利用すれば、土浦-東京間は約50分だ。

交通インフラの整備も着実に進んでいる。茨城県内には南北に走る常磐自動車道、東西を横断する北関東自動車道、首都圏中央連絡自動車道(圏央道)、東関東自動車道水戸線の4つの高速道路がある。中でも、圏央道は17年2月に茨城県内区間がすべてつながり、東名高速・中央道・関越道・東北道など6つの高速道路に都心を通過せずアクセスできるようになった。圏央道ではさらに、久喜白岡JCT-大栄JCTの区間で4車線化工事が進んでおり、24年には茨城県全区間が4車線になる予定だ。4車線化すれば、事故などによる通行止めの影響が小さくなるため、交通の便はさらによくなるだろう。

注目される格安な工業団地

アクセスのよさに加え、用地が割安なのも茨城県の魅力。県内の工業地平均地価は1m2当たり2万500円で、首都圏100km圏内の他エリアと比較しても安価であることがわかる(令和2年都道府県地価調査による)。茨城県に進出する企業は、同じ金額でより広い面積が確保できるということになる。

企業のニーズに応え、茨城県や沿線市町村ではこれまで圏央道をはじめとする主要な高速道路沿線に工業団地を数多く開発してきた。例えば「土浦おおつ野ヒルズ」(土浦市)は、常磐自動車道土浦北ICから約7km、国道354号に隣接する、「職」「商」「住」の3大機能を備えた複合型産業拠点だ。ゆとり空間を生かし、研究開発・環境配慮型の生産拠点にも適している。「仁連工業団地」(古河市)は、圏央道境古河ICへ約7kmという立地で、新4号国道へのアクセスも便利。「坂東インター工業団地」(坂東市)は、圏央道坂東ICへ約3kmという好立地だ。境町では圏央道境古河ICに直結した工業団地を整備中であり、関東物流拠点の一翼を担うエリアとして期待が寄せられている。このほか、常総市では圏央道常総IC周辺で、地域農業の核となる食と農と健康の産業団地を形成する、アグリサイエンスバレー事業も進めている。

さらに、茨城県には筑波研究学園都市を中心とした最先端の研究施設のほか、さまざまな産業が集積している。宇宙航空研究開発機構(JAXA)や産業技術総合研究所、筑波大学をはじめ多くの研究機関が集まり、国内有数のサイエンスの街として知られる。20年11月には、境町で自治体としては国内初となる自動運転バスの公道運転も開始した。茨城県の圏央道沿線地区は、豊かな自然環境と共生しつつ都心との近接性を生かし、多彩な製品を提供するものづくり産業基地、高速道路や鉄道等の交通インフラを活用した物流拠点、IoT・AI・ロボット関連などの研究開発拠点として、さらなる発展が期待される地域だろう。

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