■記事前編■

「オンライン授業不要」5月調査より2倍に増加

「GIGAスクール構想」よりも「デジタル教科書」の内容把握

「GIGAスクール構想」の認知度はどれくらい向上したのだろうか?

20年5月の調査段階では、知らないとの回答が52.8%にも上っていたが、今回の調査では、「名前を知っている」という回答が60.8%に上り、GIGAスクール構想を知らない人は40%を切るほどになっている。ただし、「内容を知っている」と答えたのは全体の43.2%、「内容を深く知っている」と回答したのは全体の19.2%にとどまった。まだまだ、GIGAスクール構想の本質的な認知には努力が必要だと考えられる。

今回の調査では「GIGAスクール構想」以外にもICT教育に関連する教育用語について調査をしてみた。その中で、「内容を知っている」として最も回答の多かった用語としては、「デジタル教科書」と「アクティブ・ラーニング」のワードであり、より実践的なICT教育へのワードについて理解が進んでいるとも考えられる。GIGAスクール構想と具体的なICTツールのひも付けをきちんと啓発する必要があるのかもしれない。

なお、そのほか内容を知っている用語としては、「新学習指導要領」「プログラミング」「eラーニング」といったワードとなった。一般企業ではこのところ語られることの多い「DX(デジタルトランスフォーメーション)」や教育界のワードとしても「PBL(問題解決型学習)」や「STEM教育(科学・技術・工学・数学を横断的に学ぶ教育法)」などの理解は極めて低い結果となった。

Officeソフトの利用は約9割もあるが…

また、現在のPCスキルについても調査では質問している。その結果を見ると、「PCのオフィスソフト(Word、Excel、PowerPoint)の使用」に関しては、約9割に当たる86.3%が扱えると回答している。「メールやチャットの使用」となると60.2%まで下がり、「Zoom、Microsoft Teamsなどのオンライン授業やミーティングをWeb上で行うことができるアプリの使用」になると43.2%と、まだまだ個人のスキルも高くはない。

令和の時代にメインの連絡手段はいまだに…

だがこれは、そもそも学校という「職場」でのICTインフラが整っていなかったことにも原因があると考えられる。

職場での連絡手段を聞いた質問では、固定電話の比率が約50%にものぼっている。メールの利用も35.2%にとどまり、チャットの利用においては、ビジネスチャット・プライベートチャット合わせても4.5%しかない。現在一般的なビジネスシーンでは、固定電話の利用はほとんどなくなり、メールの利用すら頻度が下がり、チャットの利用が増えつつある時代の中で隔絶の感がある。

こうしてみると、教育現場のICT活用の遅れというのは、Office関連ソフトの利用率の高さからみて先生の個人のスキルというよりも、職場環境としてのICTインフラの整備の遅れのように感じられる。Office関連ソフトが使えるのであれば、さらにテンプレートなどにより利用が簡単になるクラウドツールなどはさほど抵抗感がなく活用が進むのではないだろうか。

これからGIGAスクール構想により生徒1人1台体制が整い、校内のWi-Fi環境などが整備された場合には、管理職などの先生方も巻き込みながらメールやチャットといったコラボレーションツールの活用を促進させる取り組みも重要になってくるだろう。

個人のスキル磨きや情報収集にも積極的

実際、今回の調査では、現場の先生方が新たな取り組みに積極的なのも明らかになった。先生方個人のスキル磨きや教育業界の情報収集の実施の有無を確認した設問では、60.7%が行っていると回答。また今後、外部の研修なども受けるつもりがあるとする回答は、全体の68.5%にのぼった。

現在、どのようなスキル磨きや情報収集をしているか、フリーワードの回答を見てみると「授業研究」「学級経営」「指導力向上」「特別支援教育」など一般的な教育指導に関する内容と同時に、ICT教育にまつわる内容が多く寄せられている。書籍やWeb上でのICT活用の事例を研究するほか、オンライン授業やプログラミング研修などに参加しているという回答も多い。そのほか、以下のように個別のツールの活用法を学んでいるといった声も散見された。

・Google ClassroomやGoogle Formの学校での活用法を探っている
・TeamsやGoogleのアカウントの配布を模索
・研究会などでZoomや遠隔授業に関するアプリを複数取り入れ試している

 

といったように、確かに、まだまだGIGAスクール構想自体の具体的な内容の啓発は必要と考えられるが、ICT教育に向ける先生方の興味関心は高く、情報収集や研修などに積極的に取り組んでいる様子がうかがえた。

(写真:iStock)

■2020年5月調査の記事
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