津谷会長×東京大学新聞
若いときに学ぶ、クリエイティブの重要性
― 著書に切り込む後輩に、津谷氏が託す思いとは ―
「ものづくりとビジネスを繋げる」ため博報堂から
UCLAへ留学。ハンズオンでクリエイティブを学ぶ
後藤 卒業後は広告代理店の博報堂へ入社。代理店を選んだ理由を教えて下さい。
津谷 就職活動のときは同じ学部でハンドボール部だった友人と夜な夜な語らいながら、自分が本当にやりたいことを書き出していきました。そのときに気づいたのが「ものづくりとビジネスを繋げる」ということ。もともと僕は子供のころから工作したり絵を描いたり、ものづくりをするのが好きだったんです。そういったクリエイティブなことでお金を稼ぎたいな、と。建築事務所からも内定をいただいていたのですが、当時はテレビがものすごく力を持っていた時代。マスコミへ入ったほうが幅広く活動できるんじゃないかと思い博報堂を選びました。
後藤 その後しばらくしてUCLAへの留学を決断されています。そこに至った経緯を教えて下さい。
津谷 会社に入って2年間くらい経つと仕事や組織全体のことがわかってきて、新人時代にはない面白さを感じられる一方、この先のキャリアも見えてきて、それが何となくつまらなかったんです。そんな時に友人の一人からMBA留学するという話を聞いた。僕は当時、そういった選択肢があることをまったく知らなかったんです。それで留学について調べていくと、海外には「映画学部」というものがあり、そこからたくさんの著名な映画監督が生まれていることを知った。直感的に「自分はこれが学びたい」と思い、MBAではなくクリエイティブ留学を選ぶことにしたんです。
後藤 実は私も映画が好きで、今そちらの方向で留学を考えているんです。将来は映画業界も選択肢の一つかなって。昔から映画には興味があったのですか?
津谷 映画ももちろんですが、子供の頃はマンガやアニメなどのクリエイティブ全般に興味を持っていました。大学進学を考えるときには美大に行くことも迷ったくらい。しかし実際には行かなかったわけで、現場の仕事をやっていると、自分がそういったクリエイティブなことをハンズオンで勉強していないことに対しどこか気が引ける部分があったのも事実です。
会社に求められているのはあくまでプロデューサーでありプレーヤーではない。そこにギャップを感じていて、それなら一度留学して実際に作ってみるのがいちばんだと思ったんです。実はこの本『コンテンツビジネスのすべてはUCLA映画学部で学んだ。』はそういった人たちに向けて書きました。
後藤 若いうちにクリエイティブな側面を学んでおくべきだと?
津谷 ボルテージもそうですが、いまのIT企業に入る人たちって美術や映画、クリエイティブに興味がある人が多い。アートなセンスを持っている人も多いのに、みんなお金儲けのビジネスばかりでもったいないなと思うんです。新しいビジネスやコンテンツを作り出すクリエイティブな面にも目を向けたほうが、絶対本人も熱中するし楽しいと思う。そういった人たちの背中を少しでも押してあげることができれば、そういう考えがあって執筆しました。