ダウ史上初の3万ドルがさほど重要でないワケ プロの投資家は「印象度は薄い」と判断している

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11月24日のニューヨーク株式市場で、ダウ工業株30種平均が大幅上昇し、史上初めて3万ドルの大台を突破した。ウオール街で6日撮影(2020年 ロイター/Carlo Allegri)

[24日 ロイター] - 24日のニューヨーク株式市場で、ダウ工業株30種平均が大幅上昇し、史上初めて3万ドルの大台を突破した。新型コロナウイルスのパンデミックで経済が痛手を受け、なお数百万人の失業者が存在する中で、株式市場に心理的な追い風が吹いた形だ。

有望な新型コロナウイルス感染症ワクチンが相次ぎ登場したことや、米政権移行がより円滑に進みそうだとの見通しが、市場心理を上向かせている。ただプロの投資家にとって、3万ドル超えはそれほど重大な意味は持たない。

市場の熱気を共有したいと思いながらもまだ様子を見ている小口投資家にとって、今回の動きは参入を誘うきっかけになる可能性はあるものの、専門家は、ダウが2万ドルに達した2017年1月に比べれば印象度は薄く、話題を集めるニュースの見出しという以上の価値はほとんどないと言い切る。

インベスコのグローバル市場ストラテジスト、ブライアン・レビット氏は顧客に対して、ダウが3万ドルを突破したといってもそれ自体が持つ情報性は乏しい以上、過度にうれしがったり、心配したりするべきでないと助言した。

レビット氏は、ダウが2万ドルを付けた際でさえ、その約18年前の1万ドル突破に比べれば騒ぎ方は小さくなったと指摘。ハイテクバブルの崩壊や金融危機を経て、誰もが素直に祝福できない世界となっており、下手に喜ぶムードが出てこないことは、むしろ株高の持続という面ではこの上なく良い兆候ではないかとの見方を示した。

 普通の人から見れば、ダウ工業株30種平均は米国株を代表する指標としてなじみ深い。しかし大半の投資家にとって、30の大型株だけで構成される指数の重要度はかつてほどでなくなった。

S&Pダウ・ジョーンズ・インデックスによると、ダウ銘柄の合計時価総額は9兆2000億ドルで、連動して運用されている資金は282億ドルにとどまる。一方、S&P総合500種の時価総額はおよそ32兆ドル、連動資金は4兆6000億ドルに上り、市場全般のバロメーターとしてはこちらの方がはるかに大事だ。

TDアメリトレードのチーフ市場ストラテジスト、JJ・キネハン氏は、3万ドルというのは心理的な節目ではあるが、米国株全体が上昇しているという文脈でとらえるべきだと忠告する。これまでの株高をけん引してきたのは、パンデミック発生以降の巣ごもり生活が事業のプラスに働く巨大ITや、ネット通販、動画配信サービスといった企業だからだ。

キネハン氏は、足元の状況について重要なポイントとして、3月以降選好されてきたズームやペレトンズなどの銘柄が存在する一方、投資家が新たな資金の振り向け先を検討しつつあり、その中で過去数カ月間敬遠されていた銘柄が買われ、エネルギーや金融といったセクターがここにきて値上がりしている点だと解説した。

(Alden Bentley記者)

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