HISが取り組む「攻め」のDXとは? 「接客DX」に中高年層が急増のワケ
「CEOである清水さん自ら現場のスタッフの生の声を繰り返し聞いている様子を見て、本当に二人三脚で取り組めるパートナーだと感じました。
従来のビデオ接客は、『すぐつながる』ことをアピールしていましたが、ジールスさんと聞き取りを繰り返す中で、お客様にとっての価値はそこではないことに気づきました。背景や服装、化粧などを気にされる方も多いため『お客様のご都合のよい時間をご予約ください』という形に仕様変更しました」
「AI×人」の新たな接客で「おもてなし革命」を起こす
より顧客本位できめ細かい配慮の成果は、「接客DX」を試験的に導入した直後から結果として表れた。従来はリアル店舗を利用していた40~60代のビデオ接客利用が急増したのだ。
「短期間のデータではございますが、ビデオ接客の利用率が上がったのは確かです。現場の社員からは、『チャットボットでお客様のニーズをある程度把握したうえで対応できるので、よりよい接客ができる』との好意的な意見が数多く届いています」(杉田氏)
これだけ早期に結果が出たのは、ジールスのビジネスモデルも大いに影響していることだろう。
「絶対に成功させるというコミットメントはどこよりも強いと自負しています。完全成果報酬型のビジネスモデル、つまり、取り組みを通じてお客様に成果が出なければ、弊社もつぶれるというリスクを負っているのです」と明かす清水氏は、初期費用やシステム利用料を徴収するスタイルは「お客様にリスクを負わせること」と言い切る。
そこまでの覚悟を持って取り組んでいるからこそ、創業して6年という短期間ながら大手を中心に300社以上の企業にサービス導入が広がり、300万人を超えるエンドユーザーにチャットボット体験を提供できているのだろう。もちろん、それによって膨大な会話データを取得できるため、さらに精度も上げられるという好循環を生み出している。
「コロナ禍より前は、人手不足解消とコストカットが目的の『守りのDX』が主流でしたが、今は売り上げを上げる『攻めのDX』が必要です。プロの接客スタッフの仕事をAIで代替するのではなく、その強みをどう生かすか、『AI×人』の新たな接客を実現し、『おもてなし革命』を起こすことで、今までにない新たな体験価値をご提供できるはずです」(清水氏)
次なる産業革命を興し、日本をぶち上げる。ジールスが掲げるこのビジョンにもつながる新たな接客の形。「おもてなし」という日本が世界に誇る武器をオンラインで再現する「おもてなし革命」が今後、HISのみならず、自動車や不動産をはじめとする来店型店舗を展開してきた業界のビジネスモデルを根本から変えていくかもしれない。