稼働率の高いスタジアム・アリーナを 今こそ、地域の経済活性化につながる
天然芝のピッチを上下に昇降するシステムを開発
スタジアムやアリーナを「コストセンターからプロフィットセンターへ」転換するための大きなテーマとなるのが稼働率の向上だ。
「ただし、サッカーの公式試合に対応した天然芝のピッチを備えたスタジアムの場合、それがなかなか容易ではありません」と髙柳氏は指摘する。
というのも、天然芝のピッチの場合、その養生のために、オフシーズンであっても、頻繁に人を入れて芝の上でイベントをするというわけにはいかないからだ。
その課題を解決しようとしている施設もある。例えば北海道にある某ドームは、サッカーの試合がないときに天然芝のピッチ全体を屋外に移動させている。利用シーンは広がるがピッチを横に移動させるためには、当然ながらピッチ2面分の敷地が必要だ。広大な北海道だからこそできる手法である。
「そこで私たちは、街中など集客力の高い立地でも課題を解決できる方法を具現化しました。それがピッチを上下に昇降させるシステムです」と髙柳氏は紹介する。
「Phovare(ホバーレ)」と呼ばれるピッチ昇降システムは、横河システム建築と、スポーツ施設の設計などを手がけるクーダジャパン(河野久米彦代表)との共同開発で、天然芝のピッチが載ったステージにワイヤを取り付けて約80台のウィンチで吊り上げる。ピッチを上昇させればその下は広大なコンクリート床となっており、バスケットボールや、バレーボールなどのプロスポーツ、テニスやアイススケート、コンサートや各種イベントなどに幅広く使える。移動式のスタンドを備えていれば、観客数の異なるさまざまなスポーツ、イベントにも対応できる。
上昇したピッチは屋根になるが、その状態でも、公園やフットサルなどに利用できる。もちろん、十分な日照を確保できるので、芝のメンテナンスも容易だ。
「ホバーレ」なら、従来のスタジアムに比べて、利用シーンが広がり、稼働率が大きく向上することは言うまでもない。
「ピッチを横ではなく上下に昇降させるため、敷地に限りがある都心部でも有効活用ができます。商業施設などと一体化した、スマート・ベニュー®を実現するスタジアムの建設も可能です。さらに、上部アーチ構造体の設計が決まれば、客席などの移動や増減は柔軟に変更できますので、サッカークラブが昇格するのに合わせて、客席数を増設していくといったことも可能です」(髙柳氏)