感情を揺さぶる「デジタル音声広告」の実力 なぜ音声が企業ブランディングに有用なのか
印象に残る「音声」はブランディングに直結
音楽ストリーミングサービスのSpotifyに2020年5月1日からの1カ月間、デジタル音声広告を出稿したのが、音声通知対応のスマートイヤホン「Zeeny」(ジーニー)シリーズを手がけるネインだ。Zeenyは音声だけで通知を受け取ったり、操作したりすることができ、Androidに関しては、すべて音声だけで完結することができる「スクリーンフリー」をうたっている。代表取締役兼CEO・山本健太郎氏はこう振り返る。
「2月に発売した『Zeeny Lights』の認知拡大のためにラジオを中心に広告展開し、その一環として今回Spotifyに出稿しました。商品の大きな特徴が、イヤホンを着けている時にLINEやメール、ニュースアプリなどの通知がスマホに届いた際、その内容を読み上げる機能です。バナーやリスティング広告ではその特徴を伝えるのは難しいですが、音声広告であれば読み上げる音声をそのまま流せるので、ぴったりでした」(山本氏)
A/Bテストの末、出稿パターンを変更
今回の出稿では、擬人化されたZeenyが自ら「私はZeeny」と、その特徴を自己紹介するというクリエイティブを制作。当初はAパターンの転校生バージョンとBパターンの中途社員バージョンの2つを展開した。
「クリック率で両者に明確な差が表れたので、掲載期間の後半はクリック率のよかったAパターンに一本化しました。こういったA/Bテストができるところが、Spotifyの音声広告の大きな魅力です。Spotifyで試して良かった方をラジオやほかの媒体で流すといったことも考えられます」(山本氏)
ほかにもさまざまな広告成果を、数値でつかむことができたという。今回の出稿では、1カ月に約21.6万インプレッション(流れた回数)、約18.6万ユニークユーザーリーチ(広告に触れたユーザー数)を達成した。
「バナー広告やリスティング広告はブランディングにつながりにくい面があり、動画広告はスキップされやすいというデメリットがあります。またSNS広告は、たとえインプレッションが高くても、流し見されやすい面がある。対してSpotifyの音声広告は視聴している楽曲の合間に配信され、スキップ機能がないことから、完全聴取率(広告を最初から最後まで聴く率)が非常に高く、印象に残りやすいため、ブランディングにはとても有効だと感じています」(山本氏)
テレビCMなどでもお決まりの「サウンドロゴ」は頭に残りやすく、何度も聞くことで企業への安心感や信頼感を醸成する。同社では、同時にインフルエンサーマーケティングも実施していたが、インフルエンサーに紹介されるだけでは、実際の購買にはつながらなかったという。デジタル音声広告も並行して実施することで、紹介されたものが「信頼できる商品」であるというブランディングにつながり、売り上げも伸びたそうだ。
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