新車需要2割消滅で自動車は優勝劣敗が鮮明に トヨタ黒字確保、日産は業績不振に追い打ち

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一方、赤字が避けられないのが、経営再建中の日産自動車だ。カルロス・ゴーン元会長による拡大路線で過剰な生産設備を抱え込み、近年は急速に業績が悪化。前年度は営業損益が404億円の赤字に転落。過剰設備の減損損失や構造改革関連の特別損失が膨らみ、6712億円もの巨額の最終赤字に陥った。

ゴーン時代に日産は、新興国での生産能力拡大に対して優先的に投資を振り向け、新車開発を後回しにした。その結果、前回のモデルチェンジから長い年数を経た老齢車種ばかりがラインナップに並び、世界的な販売低迷の一因になっている。とりわけ、主戦場のアメリカでは商品力の低い老齢車種を売りさばくため、大幅な値引き販売が常態化、収益性が悪化した。

そうした状況下で、さらに追い打ちをかけたのが、今回のコロナ危機だ。トヨタやホンダなどに比べて日産の販売の回復ペースは鈍く、今年度の販売台数は他社より落ち込みが大きくなる可能性が高い。工場閉鎖や人員削減などのリストラ効果が本格的に出るのは来年度以降とみられ、今年度は営業損益段階での巨額赤字が避けられない。

ホンダの場合、前年度の営業利益は6336億円。コロナ禍の今年度でも、黒字を維持するとみられるが、前年度比では大幅な落ち込みが確実だ。以前から不振の4輪だけでなく、収益柱の2輪もコロナ影響を被っている。

2輪の主戦場はインドネシアやベトナムをはじめとする東南アジアとインドで、いずれもコロナ禍で現地販売が落ち込んでいる。2輪事業は前年度に2856億円の利益を稼ぎ出し、4輪事業(1533億円)よりも利益貢献度が大きいだけに、その販売回復が遅れれば業績への打撃は大きい。

自動車部品も打撃で業界再編が迫る

大手3社以外はどうか。マツダはアメリカで2021年の稼働を目指し建設中の新工場など大型投資が重荷になっており、販売台数の落ち込みも重なって、今年度は営業赤字転落の可能性が高い。スバルは全販売台数の8割を占める北米の需要回復にかかっている。スズキはインドがドル箱だが、4月は全土封鎖で販売がゼロだった。5月から現地の工場や販売店が活動を順次再開したが、その後もインドでは感染収束が見えない状況が続いており、インド事業の先行きが大きな不安材料だ。

完成車メーカーだけではない。自動車の販売不振によって、その下に連なる部品メーカーも窮地に立たされている。大半の部品メーカーは今年度の業績予想を公表していないが、『会社四季報』(2020年3集夏号)での独自予想では軒並み大幅な減益だ。

ちなみに東証業種分類が「輸送用機器」に該当する企業のうち、自動車関連の主要な部品会社30社を例に取ると、30社中26社で今年度の営業利益が前年度より悪化。うち4社は赤字に転落する見通しだ。増益見通しの4社も前年度に多額の一過性費用が発生した反動にすぎない。

デンソーアイシン精機豊田自動織機など、ごく一部の大手を除けば、部品メーカーの資金力は限られる。下位メーカーになればなおさらだ。自動車産業では、自動運転や電動化といった「CASE」と呼ばれる次世代技術が台頭し、産業構造の大きな変革も待ち構えている。今回のコロナ禍による業績悪化が引き金となって、自動車部品業界の再編が加速する可能性もあるだろう。

木皮 透庸 東洋経済 記者

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きがわ ゆきのぶ / Yukinobu Kigawa

1980年茨城県生まれ。一橋大学大学院社会学研究科修士課程修了。NHKなどを経て、2014年東洋経済新報社に入社。自動車業界や物流業界の担当を経て、2022年から東洋経済編集部でニュースの取材や特集の編集を担当。2024年7月から週刊東洋経済副編集長。

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岸本 桂司 東洋経済 記者

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きしもと けいじ / Keiji Kishimoto

全国紙勤務を経て、2018年1月に東洋経済新報社入社。自動車や百貨店、アパレルなどの業界担当記者を経て、2023年4月から編集局証券部で「会社四季報 業界地図」などの編集担当。趣味はサッカー観戦、フットサル、読書、映画鑑賞。

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