東京海上日動ドライブレコーダー特約の実力 人ではなく「AI」が事故状況を説明する時代

ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小

「事故状況再現システム」で示談交渉をスムーズに

相手がいる事故の場合、示談交渉で事故当時者間の責任割合を決定していくことになるが、DAPに新たに搭載された「事故状況再現システム」を活用すれば、示談交渉にかかる当事者の負担を減らすとともに、円滑な交渉にもつなげることができるという。

開発を担当した同社損害サービス業務部システムグループの吉野梨絵子氏は、こう説明する。

東京海上日動火災保険
損害サービス業務部
吉野 梨絵子氏

「これまでは、保険金のお支払い可否の判断や示談交渉のために、保険会社の担当者が当事者双方の走行状況や交通規制の有無などを確認し、事故状況を図面化しなければなりませんでした。そのため、複雑な事故の場合などは、どうしてもご質問する項目が多くなり、事故内容の確認にかかる時間が長くなってしまいました。そこで、AIに過去の事故データや示談交渉の基礎となるデータを学習させ、事故状況の図面化や責任割合の算出を自動化する仕組みをつくりました」

責任割合は、当事者からヒアリングした事故発生状況を基に、類似する裁判例などを参考にしながら、当事者間の交渉を通じて決定していく。ただ、複雑な交渉内容は、一般的な事故当時者には理解が難しい。また、当事者同士の認識に 齟齬 そご が生じることも多いため、納得のいく解決が困難になるケースも少なくない。

そんなとき、「事故状況再現システム」が利用できれば、ドライブレコーダーの情報から解析された客観的なデータを提示することができるため、相手方との示談交渉を円滑に進めることができるだけでなく、事故当時者になった保険契約者本人も、保険会社から提案を受けた示談案に対して、納得感を得やすい。

また、事故が発生した際には、警察や弁護士などに事故の状況を説明しなければならないケースもあるが、専門家に対して要点を押さえた状況説明を行うことは容易でない。しかし、「事故状況再現システム」によって作成される「お客様向け説明資料」があれば、客観的なデータが「見える化」され、関係者への説明資料として示すことができ、事故状況の説明にかかる負担を大幅に削減することが期待できる。

例えば、「あおり運転」の被害が相次いで報道される中で、相手方が一方的な被害主張をするケースも出てきているが、こういった資料の提出が可能になれば、被害者が泣き寝入りする事案も減らすことができるかもしれない。

画像を拡大
ご案内資料サンプル

「事故に遭われた方の多くは、不安な気持ちを抱えています。そのような中、保険会社への説明でご負担をおかけしたうえ、いつまでも納得のいく解決ができなければ憂鬱な気分になってしまうはずです。

『事故状況再現システム』がスムーズな事故解決につながり、1日でも早くお客様に“日常”へお戻りいただくためのサポートになればと思っています」(吉野氏)

同社によるとDAPは現在、個人向けが累計約30万台、法人向けが約6万5000台(19年12月末現在)と、着実に契約数を伸ばしている。国民の交通トラブルに対する対処意識が高まった影響もあるだろうが、リリース時には想定していなかった需要も出てきているという。

例えば、ある男性は、「離れて暮らす高齢の母が心配なので」と、見守り役としての機能を期待して、数あるドライブレコーダーの中からDAPのドライブレコーダーを選択したという。高齢化社会が進む中で、こうした需要はさらに増えていくことが予想される。

次ページスマホやパソコンから円滑な保険請求が可能に