感染拡大防止のために仕事を休む場合であっても、休業手当がもらえるとなると安心感はあります。中には、給与の全額が補償されると思っている方も少なくありません。しかし、必ずしもそういうわけではなく、企業ごとにルールが異なるため、注意が必要です。
労働基準法第26条では、使用者の責に帰すべき事由による休業の場合には、使用者は、休業期間中の休業手当(平均賃金の100分の60以上)を支払わなければならないとされています。
ここでポイントとなるのは、100分の60「以上」ということ。つまり、会社によっては60以上から100までの幅があるわけです。これは、就業規則で休業手当の支払い時にどう取り扱われるか、規定を確認すればわかります。
ただ、今回のような状況にあって、通常は平均賃金の60%であるが、新型コロナウイルスに関する休業は通常どおり全額支給の取り扱いが行われる可能性もあります。あるいは、臨時的に特別有給休暇を設けて、対応する企業もあるでしょう。
平均賃金の算出方法
では、休業手当を平均賃金の60%とする場合、休業1日あたりいくらもらえることになるでしょうか。ここでいう「平均賃金」とは、算定事由の発生した日以前3カ月間に支払われた給与の総額を、その期間の総日数(歴日数)で除した金額をいいます(労働基準法第12条)。
原則として起算日は、直前の給与締日となります。例えば、給与締日が毎月末日で、3月2日から休業となる場合、2月から前年12月分の給与総額(ボーナスを除く)を総日数で除します。毎月の給与が35万円だった場合、平均賃金は1万1538円46銭となります。
平均賃金算定事由発生日:3月2日
2月分(2月1日~2月29日)
基本給30万円 業務手当3万円 通勤手当2万:計35万円
1月分(1月1日~1月31日)
基本給30万円 業務手当3万円 通勤手当2万:計35万円
12月(12月1日~12月31日)
基本給30万円 業務手当3万円 通勤手当2万:計35万円
平均賃金
=(35万円+35万円+35万円)÷(29日+31日+31日)≒1万1538円46銭
この例で、3月2日から6日までの休業手当が支払われる場合、5日分で3万4615円(円未満端数は四捨五入)となります。
給与の全額が補償されると思っている場合に、休業手当が平均賃金の60%だとすると、意外と大きな差が出ることになって、驚かれる人もいるかもしれません。「金額が間違っているのでは!?」と思ってしまう場合は、冷静に計算をしてみましょう。
なお、こうした休業手当は、パートやアルバイト等の非正規社員も当然対象となります。時間給や日給、出来高給制の場合、上述の原則的な計算方法では金額が低くなってしまう場合もあるかもしれません。そこで、算定事由の発生した日以前3カ月間に、支払われた給与総額をその期間の「労働日数」で除した金額の60%が最低保障となります。
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