都心から45分、星空の世界遺産を目指す島 「観光客誘致=経済効果」だけではない理由
一方で、課題もある。観光客が海水浴シーズンの7月から9月に集中しているうえ、島への交通手段や宿泊施設が限られるため、繁忙期に今以上の観光客を受け入れられないという。
そこで今、取り組んでいるのが閑散期の集客対策。東京の11の島々を「宝島」と名付けブランド化を目指す、東京都の「東京宝島事業」の一環として、「星空保護区」の認定を目指している。
「星空保護区」とは、天文学者や環境学者らでつくるNPO法人 国際ダークスカイ協会が始めた、美しい夜空を保護・保存するための優れた取り組みをたたえる国際的な認定制度で、「星空版世界遺産」とも称される。
認定には主に、「夜空の暗さ・屋外照明の構造基準」「夜空の体験プログラム・ツアーの実施」「自然保全の啓蒙・教育プログラムの実施」の3つのポイントが求められる。
「星空保護区」認定に向け、越えなければならないハードル
現在、国内では沖縄県の西表石垣国立公園が2018年、段階的な街灯基準を満たすことを条件に暫定認定されているが、神津島が本認定されれば、日本で初の快挙となる。
しかし、認定に向けた取り組みはそう簡単なものではなく、とりわけ街灯基準のハードルは高い。日本の一般的な白色LED街灯では基準を満たさず、色温度を下げた電球が必要なうえ、光が上空に漏れないように電灯は水平でなければならない。
要は、日本で認定を受けるには、街灯の総入れ替えが必須となる。神津島では村全体の約560基の総入れ替えに向け、着々と準備を進めているという。
また、神津島では2016年、観光財団の取り組みの一環で島を訪れたインターンの学生が、星空に感激したのをきっかけに星空を観光の目玉の1つにしたいと考え、星空ガイドの養成を始めた。こうした取り組みは、早期の認定を後押しするだろう。
NPO法人 神津島観光協会事務局長で、星空ガイドを務める覺正恒彦氏は次のように語る。
「同じ星空でも、認定ガイドは参加者に合わせてさまざまな星空の楽しみ方を提案しています。参加者の星座の見つけ方で盛り上げたり、星や月にまつわる神話を子ども向けにわかりやすく紹介したり。
江戸時代には、決まった月齢に人々が集って月の出を待った『月待行事』があり、島にもその名残の石碑『月待塔』が残っています。こうした風習など、島のことも積極的に話すようにしています」