「東証上場」を目指す海外スタートアップ企業 「日本版預託証券(JDR)」の検討進む
海外企業の東証上場の新たな仕組み「JDR」とは
海外企業が東証に上場するには直接上場(外国籍)や日本法人(内国籍)の上場などの方法がある。海外企業が東証上場を検討するにあたっては、どのようなスキームが考えられるのだろうか。
「近年になって、ここにもう1つ、『日本版預託証券(JDR)』という新たなスキームが加わりました。JDRは内国証券扱いになるため、発行体企業にとっては、外国法人のままで日本株と同様な扱いを受けて東証に上場できるのが大きな特徴です」と語るのは、三菱UFJ信託銀行 法人マーケット統括部 エグゼクティブアドバイザーの星治氏だ。
星氏は早くから、信託の枠組みを利用し貴金属の現物を裏付けにしたETFを上場させるなど、先進的な上場商品のスキーム開発では、国内のパイオニア的存在だ。
「JDR(Japanese Depositary Receipt)は米国で普及している預託証券(DR)の日本版で、信託法、金融商品取引法改正を契機に07年に導入されました。海外企業は、自社の株式を信託で包むことで、日本の資本市場で日本株のように資金調達、流通させることが可能となります」
星氏によれば、JDRは原株式を信託財産とする受益証券発行信託の受益証券を発行するというスキームになっているという。現在、国内で同スキームを取り扱っているのは、三菱UFJ信託銀行だけだ。
同行 法人マーケット統括部 海外証券代行企画室 調査役の髙橋惇氏は、「スキーム自体は高度なものですが、個人投資家の方にとってはいつも利用されている証券会社で日本株と同様に売買していただけます。外国証券取引口座の開設も不要で、日本の法令、税法上で取り扱われます」と話す。多くの証券会社で、信用取引も可能だという。
星氏は「海外企業にとっては、従来の方法である直接上場では十分に得られなかった東証上場のメリットを享受できることから、最近ではJDRのスキームを利用して東証マザーズなどに上場しようと考える海外企業が増えています。17年9月には、外国株JDR第1号として米シリコンバレーに本社のある半導体ベンチャーのテックポイント・インクが東証マザーズに上場しました」と語る。
テックポイント社は監視カメラや車載カメラ向けの半導体を手がけており、中国の大手車載機器メーカーにも同社の製品が採用されている。日本での資金調達のほか、日本の優秀な半導体エンジニアを獲得するために、日本での知名度を上げたいというのも日本での上場を決めた理由だという。