組織が150人超えると急に創造力を落とす理由 規模拡大でも活力を失わない科学的アプローチ
かつて、筆者がシリコンバレーにおけるベンチャーキャピタルやナスダックをはじめとした起業インフラの構造を日本と比較研究したときに、「B29と竹やりの戦い」と感じたことがあったが、今後、アメリカの大規模組織が「銃」に投資し始めたら、呑気にナイフを使っている日本企業はさらなる致命傷を受けるだろう。
気づいてほしいのは、GAFA(グーグル、アップル、フェイスブック、アマゾン)と呼ばれる革新的企業はすでに何万人、何十万人という雇用を抱える大組織であり、彼らもつねに大規模組織と新しいアイデアが共存する努力を続けているということだ。
イノベーションとは嵐の中を舞う葉っぱのようなもの
さて、イノベーション研究者という職業柄、個人的に興味があるのは、「ビジネス論やイノベーション論に並々ならぬ関心を持つ方々を主に想定して書いている」という「おわりに」である。バーコールはクリステンセンの「破壊的イノベーション」を事後的な解釈として辛辣に批判する。ある変化が破壊的かどうかは、ある発明や発見が市場にどんな影響を及ぼすかという結果であり、イノベーション遂行者が初めから意図したものではない。
「革新的と見なされているアイデアやテクノロジーは、開発当初、どんな製品になるのかは見当もつかなかったものが多い。そんなアイデアを育てて、製品化にこぎ着けたのだ。急速に進化する市場の中の初期プロジェクトは、嵐の中を舞う葉っぱのようなもの。最後にどこへ行き着くか予測するのは難しい。葉っぱが着地した後で、このテクノロジーが市場を破壊したというのはやさしい」というバーコールの言葉には説得力がある。
確かに今、求められているのは、事後的なる破壊を想定したようなイノベーションを探し求めることではなく、これまでの常識や信条からいってありえないような「クレイジー」なアイデアを許容し、大事に育てる組織の構築なのである。結果がどうなるかわからないが、本人がワクワクして「これだ」とのめり込んでいるものは、「やってみて、3回以上失敗して、あざ笑いやあざけり、裏切りや妨害を経て」しか結論は出ない。そんな貴重でもろいものを組織の都合や確率分布を根拠に排除していたら、絶対に面白い社会は来ない。
本書は逸話と理論が入り交じり、決して読みやすい本ではない。しかし、本書には「いかれたアイデア」に対する愛と信頼があり、前に進もうという勇気が湧く。今、日本の経営者に読んでほしい1冊であることは間違いない。
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